イブランスが効かなくなったため増量しましたが効果はあるのでしょうか?

2020年8月21日  , 

術後抗がん剤、放射線治療、ホルモン剤治療とやってきましたが、1年少しほどで骨に転移再発してしまいました。イブランス+フェソロデックスを使っていて最初は抑え込めて腫瘍マーカー(CA15-3)の値が70から18と基準値以下になったのですが、白血球数が少なく、減薬を繰り返した結果、再び腫瘍マーカーが45と上がりだしました。先日、医師と相談して白血球がある程度あることを確認した上で薬の量を元に戻し、もう1クールやることにしたのですが、効果があると思いますか?

また、PETを撮影したところ、骨以外に転移していないのですが、がんが消えたり、新たにできたりするところもあったみたいです

主治医はまた次の月に腫瘍マーカーを確認して、悪化していた場合薬を変えるということになったのですが、イブランスが効かずに、来月までにさらに悪化して他の臓器に転移するのではないか?という不安があるのですがどうでしょうか…?

イブランスの副作用として好中球減少(白血球減少)がよく知られています。そのため休薬したり減量したりすることはよくあります。それにより腫瘍マーカーの変化があるかどうかについてですが、ホルモン療法だけ(今回の場合はフェソロデックスだけ)を使用した場合は、マーカーの変化も効果の変化も緩やかですのであまり変化しない印象です。しかし、イブランスなどのCDK阻害剤を併用した場合は、効果のでるまで(腫瘍マーカーの減少するまで)の期間は短いように感じています。同じCDK阻害剤のベージニオを使った場合は1~2ヶ月で減少に転じていました。それと同じに考えると、休薬により腫瘍マーカーが上昇する可能性はあると考えます。ですから再開すればまた効果があるかもしれません。ただ、イブランスは減量して使っても標準量と比べて効果に差が無いことも臨床試験で報告されており、減量しても効果があった可能性もあります。

以上を考えると

(1)ベージニオを好中球減少がない量に固定して再開、継続する(休薬しなくても良い量まで減量するということ)

(2)好中球減少の頻度が少ないベージニオに代えてみる(その代わり下痢が起きやすいですが)

のが現実的な選択だと思います。あと大事なことは、効果のあるなしは腫瘍マーカーで判定してはいけません。あくまで画像診断が基本で腫瘍マーカーは副次的なものです。治療を代えるタイミングが遅くなったら・・・と心配しておられますが、逆に効果のある薬剤を早く代えてしまうことも患者さんのためにはならないと考えます。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行