オンコタイプDXについて

2021年7月20日   

オンコタイプdxにおける、抗がん剤とは何ですか?EC療法+タキサンでしょうか。また、オンコタイプdxにおける無再発生存率は、HBOC遺伝性乳がんも含めた無再発生存率なのでしょうか?

 

 

1.Oncotype Dxの化学療法の内容について

Oncotype Dxの化学療法の効果予測に関する臨床研究のデータをもとにお答えします。まず、リンパ節転移陰性の患者さんを対象にした2つの臨床試験NSABP B-20試験、TAILORx試験について説明します。

NSABP B-20試験:Oncotype Dxがリンパ節転移陰性の乳がん患者さんの化学療法の効果予測に有用であることを立証した初めての臨床試験です。内分泌療法はタモキシフェン、化学療法はCMF療法が主に使用されています。

CMF療法は以前は術後補助化学療法の標準的な治療でしたが、最近は使用される頻度はかなり少なくなっています。

TAILORx試験:Oncotype Dxの高いエビデンスが得られた最初の前向き無作為化試験であり、リンパ節転移陰性の中間リスク(再発スコアが11~25)の乳がん患者さんに対する内分泌療単独での治療の安全性が示されました(一部の患者さんでは化学療法の追加効果あり。)。内分泌療法はアロマターゼ阻害剤が主に使用されています。化学療法はTC療法が56%、AC療法またはCAF療法(あるいはEC療法またはFEC療法)が29%、TAC療法またはAC⇨T(ドセタキセル)療法が7%、CMFが7%の割合で使用されています。

次にリンパ節転移陽性の患者さんを対象にした2つの臨床試験SWOG-8814試験、RxPONDER試験について説明します。

SWOG-8814試験:リンパ節転移陽性の乳がん患者さんを対象にした前向き無作為化試験であり、リンパ節転移陰性の患者さんを対象にしたTAILORx試験と同様にOncotype Dxの再発スコアの結果から化学療法の効果が予測できることが確認されました。内分泌療法はタモキシフェン、化学療法はCAF療法が主に使用されています。

RxPONDER試験:リンパ節転移陽性(1~3個)でOncotype Dxの再発スコアが0~25の乳がん患者さんをを対象にした前向き無作為化試験であり化学療法の効果をより詳細に検証すること目的として行われ、ました。結果、閉経後の患者さんでは化学療法の効果はなく、内分泌療法単独での安全性が示されました。この試験では内分泌療法はアロマターゼ阻害剤あるいはタモキシフェンが使用されており、化学療法はTC療法が主に使用されています。

 

2.Oncotype Dxの無再発生存率のデータにHBOC陽性患者さんmのデータも含まれているかどうかについて

TAILORx試験、RxPONDER試験の論文とプロトコールを確認しましたが、HBOCの遺伝学的検査の結果に関する記述はありませんでした。これらの二つの試験には、過去に乳がんの既往がある患者さんは参加されていませんが、RxPONDER試験では同時性両側乳がんの患者さんも試験に参加されていますので、HBOC陽性の患者さんも少なからず含まれているでしょう。したがってOncotype Dxの無再発生存率のデータにはHBOC陽性の患者さんのデータも含まれていると推定されます。今後、新しいデータが報告されるかもしれません。

参考文献:

  • Sparano JA. Et al. Adjuvant Chemotherapy Guided by a 21-Gene Expression Assay in Breast Cancer. N Engl J Med. 2018 Jul 12;379(2):111-121. PMID: 29860917
  • Albain KS. Prognostic and predictive value of the 21-gene recurrence score assay in postmenopausal women with node-positive, oestrogen-receptor-positive breast cancer on chemotherapy: a retrospective analysis of a randomised trialLancet Oncol. 2010 Jan;11(1):55-65. PMID:20005174

参考webサイト:

1)https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00310180

2)https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01272037

3)https://www.oncotypeiq.com/ja-JP

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治