トモセラピー治療について知りたいです

2020年1月15日   

先月、マンモグラフィーを受けたところ、左乳房の下部にしこりが見つかり、エコー、MRI、針生検を受け、「浸潤性乳管がん」と診断がつきました。しこりの大きさは1.3㎝で、MRIの画像から、「しこりは乳頭に続く」ということで、しこりと広がりから、全摘するのがいいのではないかということでした。リンパ節への転移は、MRIでは所見なしです。乳がんについてインターネットで調べていたら、トモセラピーという強度変調放射線治療というものがあると知りました。その例では、しこり2.5㎝、わきの下のリンパに転移がないステージ2Aで、手術で切ることなく、トモセラピーを週4回合計16回して、がんが消えたというものでした。それが浸潤がんだったのか、非浸潤がんだったのかはわかりませんでした。トモセラピーなら乳房は残せるのか?と期待を持ちました。トモセラピーでがんが消えなくても、小さくしてから部分切除などはできるのでしょうか?できれば全摘はしたくないのですが、温存にしてもかなり変形するならいっそ全摘か?再建も考えてみましたが、再建して一生そのままで大丈夫なのか?と考えがまとまらず、迷ってばかりいます。トモセラピー治療について、放射線科でセカンドオピニオンを受けようかと思っていたのですが、時間もかかり、その間に進行してしまわないかという不安もあります。私のような場合、トモセラピーの適応になるのか?というのが知りたくて、この場を借りて質問させていただきました。よろしくお願い致します。

ご質問ありがとうございます。トモセラピーとは放射線治療装置の一種であり、用いられる放射線は通常の放射線治療装置と同じX線になります。したがって、治療効果は通常の放射線治療装置と同等です。強度変調放射線治療とはコンピュータに複雑な計算をさせることで、放射線の出る強さ(強度)を複雑に変える(変調)ことができる照射法です。この技術により腫瘍への投与線量の増加と近接する正常組織への線量低減が可能となります。主に、前立腺癌や頭頸部癌で用いられています。ただし、強度変調放射線治療は、トモセラピー以外の一般的な放射線治療装置でも行うことができます。早期乳癌の標準治療は、乳房温存手術+術後放射線治療、もしくは乳房切除術になります。先ほども述べましたように、トモセラピーによる強度変調放射線治療であれば、通常の放射線治療よりも効果が高く、放射線治療単独で標準治療と同等の治療成績が期待できるというわけではありません。切らずに治したいというお気持ちはとてもよくわかりますが、放射線治療単独での治療は標準治療と比較して治療効果が劣るため、決してお勧めしません。乳癌の治療において標準治療をきちんと受けていただくと言うことは非常に大切です。また、術前に腫瘍を縮小させる方法としては術前化学療法があります。術前化学療法により腫瘍が縮小した場合には温存術が可能となることもあります。しかしながら、温存術を可能にする目的として、術前に放射線治療を行うということはありません。術前化学療法の適応があるかどうかは主治医の先生とよくご相談ください。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの