トリプルネガティブのステージIIB センチネルリンパ節マクロ転移がありました。郭清手術か抗がん剤か迷っています

2022年5月6日   

術前トリプルネガティブで腫瘍の大きさ3.7cm
術後センチネルリンパ節に2.5mmの転移があり郭清手術をしてから抗がん剤治療をする旨主治医から言われ手術日も決めてきました。
詳しい病理検査結果はまだですが、次の診察日に先生から顔つきがすごく悪かったので抗がん剤治療をすぐするか、郭清手術を受けるかはどちらでもいいと言われましたが、その場で判断できませんでした。
郭清手術を受けるとリンパ浮腫、肩関節の拘縮などリスクが大きくその後すぐ抗がん剤治療すると傷口も治らない状態の上にリンパ浮腫がもし出た場合、抗がん剤に耐えられる自信はないです。
質問として
マクロ転移の場合は郭清手術を推奨するようですが、郭清手術をせずに抗がん剤治療した場合、予後は変わりませんでしょうか?
抗がん剤の後は放射線治療も考えているようです。
抗がん剤はAC療法とタキサンです。

手術日が迫っているなか判断できずに迷っています。
どうかよろしくお願いいたします。

ご質問ありがとうございます。トリプルネガティブ乳がん(術前診断 T2 N0 M0 ステージⅡA)に対して、乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を行い、その結果、センチネルリンパ節に2.5mmのマクロ転移を1個認めたという状況でよいでしょうか。(※術式については記載がありませんでしたが、腫瘍の大きさが3.7cmで、3cmを超えるため、通常は乳房全切除をしたものと考えます。ただし、術後放射線療法を行うとのことなので、乳房温存手術かもしれませんが。また、センチネルリンパ節の転移個数も記載されていませんでしたが、ここでは1個だけと考えました。)

術後診断は、T2 N1 M0 ステージⅡBとなります。『郭清手術か抗がん剤か迷っています』というご質問ですが、まず、大前提として、トリプルネガティブ乳がん ステージⅡBのため、術後の抗がん剤は必須です。全身の転移再発の防止目的に行う薬物療法としては、抗がん剤しかないからです。

郭清手術については、センチネルリンパ節が陽性の場合、行うことが通常推奨されますが、ある条件によっては郭清を省略できる場合もあります。

乳癌診療ガイドラインによりますと、【CQ4. センチネルリンパ節に転移を認める患者に対して腋窩リンパ節郭清省略は認められるか?】に対して、CQ4b-3:[乳房全切除術の場合,放射線療法あり]腋窩リンパ節郭清省略を弱く推奨する。とあります。

ただし、T1/T2、術前リンパ節転移なし(cN0)、センチネルリンパ節の転移個数2個までという条件です。 リンパ節転移個数が1個であれば、術後放射線療法も行うとのことですので、乳房全切除後の胸壁への放射線療法に加え腋窩への放射線療法も行えば、抗がん剤治療もしっかりとする前提では、予後に差を認めず、腋窩リンパ節郭清省略も可能と考えます。郭清手術を省略すれば、抗がん剤治療→放射線療法という流れになります。

ただし、リンパ節転移個数が3個以上であった場合には、やはり郭清手術が必要になります。その場合、郭清手術→抗がん剤治療→放射線療法の流れになります。質問者様も言われるように、郭清手術には、リンパ浮腫の出現頻度や手術合併症の増加がありますので、省略可能なら省略する方がよいです。

もう一度主治医としっかりとご相談されるとよいと思います。

 

文責:尾道総合病院乳腺外科 吉山知幸