ホルモン陽性HER2陽性乳がんの術前化学療法について

2022年3月5日  , 

Stage2A, ER+/PgR+/HER2+++/Ki67低の乳癌です。術前化学療法は、3週毎にドキソルビシン/エンドキサンを4回投与後、ハーセプチン/パージェタ/ドセタキセルを4回投与しました。

1,ドキソルビシン/エンドキサンは腫瘍縮小に効果がなく、投与された血管が損傷して変色し、使えなくなりました。Ki67が10%程度で低いことを考慮すれば、理論的には細胞増殖をブロックするドキソルビシン/エンドキサンは腫瘍縮小に効果がないと予想されるのではないでしょうか。副作用が強く脱毛や血管障害が起きて腫瘍縮小に効果がないことが予想されたにもかかわらず、投与されたのは何故でしょうか。治療と腫瘍縮小化を最優先に考えるならば、ドキソルビシン/エンドキサンよりも、ハーセプチン/パージェタ/ドセタキセルを先に投与する選択ができたのではないかと、モヤモヤしています。

2,生検でER+/PgR+(強陽性)が分かっていましたが、術前にホルモン療法についての説明は全くなく、術後2か月以上経過後に提案されました。術前からホルモン療法を開始して抗がん剤と併用していれば、腫瘍はもっと縮小して手術も縮小できたのではないかと思います。癌がみつかった時点で、抗がん剤とホルモン療法は、併用できないのでしょうか?できないとすれば、その理由を教えてください。

HER2陽性乳がんに対する標準的な術前化学療法はアンスラサイクリンレジメンとタキサン+ハーセプチン+パージェタの順次投与です。

1.ドキソルビシン+エンドキサン治療は、HER2陽性乳がんの標準的な治療であり、たまたま腫瘍が縮小しなかっただけで、この治療で縮小する人はたくさんおられます。ハーセプチン/パージェタ/ドセタキセルを先にするかAC療法を先にするかは差がないと考えられていますので、どちらでも良いと思います。最近、行われている臨床試験JCOG1806試験でも、最初はACもしくはEC療法からのスタートです。

2.ホルモン療法と化学療法の併用は、基本的に勧められていません。相乗効果はありませんし、併用する方が副作用が増える可能性もあります

受けておられる治療は、標準的な治療と考えられますので、安心して治療を続けてください

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎 学行