ルミナールA、リンパ転移ありの症例に化学療法の上乗せするか悩んでいます。

2021年4月27日   

51歳の女性です。
浸潤性小葉がんで、右乳房全摘+リンパ節郭清、現在、放射線治療中です。浸潤性小葉がん4.5㎝、リンパ節移転1個。放射線治療後にホルモン療法は決まっていますが、しこり大きさとリンパ節移転もあり、担当医からはホルモン治療前に再発を防ぐため抗癌剤治療を検討するよう言われ、悩んでいます。
担当医は病理検査結果でKi67値が5~15%と低いことから、抗がん剤治療は再発率の圧縮幅は小さいが、本人次第だと。
病理検査結果:腫瘍径45mm(大きなしこりではなく、散らばった感じ)、リンパ節転移あり(センチネル節1/3. 腋窩0/4) 悪性度グレード2 ER陽性10%以上染色強度中等度 PgR陽性 10%以上染色強度高度 HER2陰性 score0 Ki67 5~15% Stage Ⅱb ルミナールA
抗癌剤副作用を考えると不安です。
閉経前で、生理は昨年辺りから3ヶ月に1度程度です。
このようなときに、Oncotype Dx(オンコタイプ ディーエックス)による再発スコア測定での検討もあるとも聴いてはいますが、抗がん剤治療を推奨されるものなのでしょうか。再発を少しでも下げたいのであれば 追加するべきなのか、決めかねています。ご意見をお願いします。

相談者様の病理検査の結果を考えると、浸潤径が比較的大きく、1個のリンパ節転移が陽性ですので、再発のリスクに関しては中等度と考えられます。したがってLuminal-A like subtypeではありますが、術後治療として内分泌療法に加えて化学療法を考慮することも比較的多いかと思います。このようなケースでは、化学療法を受けるかどうか悩まれる患者さんも少なくありません。実際、このような患者さんに対してオンコタイプDX検査について説明する機会が増えています。
オンコタイプDX検査は、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性あるいは陽性(1~3個まで)の浸潤性の乳がん患者さんを対象に化学療法の効果が得られる患者さんを見分けるために開発された検査です。まず、乳がん患者さんの腫瘍組織中の16個のがん関連遺伝子と5個の参照遺伝子の発現量を測定し、患者さん一人一人の“再発スコア”が算出されます。そしてこの“再発スコア”に該当する1.遠隔再発のリスク、2.再発予防としての化学療法の上乗せ効果という情報が得られます。実際の臨床試験のデータに基づいた検査なので、数字としてこれらの情報が得られる点がこの検査の利点と思われます。
相談者様のようなリンパ節転移陽性であっても“再発スコア”が低く、化学療法の上乗せ効果がないことが予想される患者さんもおられますので 1)2) 、検査をうける利点は十分にあると考えます。ただし、日本では保険適用外の検査ですので、費用が45万円程度とかなり高額であり、すべての患者さんが受けられる検査ではないという課題があります。
参考webサイトを下記に記載していますのでご参照頂ければ幸いです。
参考文献:
1)Prognostic and predictive value of the 21-gene recurrence score assay in
postmenopausal women with node-positive, oestrogen-receptor-positive breast cancer on
chemotherapy: a retrospective analysis of a randomised trial. Kathy S Albain et al. Lancet
Oncol. 2010 Jan;11(1):55-65
2)Clinical outcomes in ER+ HER2 -node-positive breast cancer patients who were
treated according to the Recurrence Score results: evidence from a large prospectively
designed registry. Salomon M Stemmer et al. NPJ Breast Cancer. 2017 Sep 8;3:32.
参考webサイト:
https://www.oncotypeiq.com/ja-JP