一卵性双生児のはずの姉妹でBRCA遺伝子検査を受けたんですが、私には異常があり姉にはありませんでした。どうしてでしょうか?

2020年7月30日   

初めまして。1昨年、38歳の時、3人目の子を妊娠中(11週)に乳がんがわかりました。右乳房に3.5cm、リンパ節転移有(8/16)、ホルモン(-)、HER2(-)Ki67=85%、と書かれていますが詳細な説明はなかったのでよくわかりません。その後、妊娠の進行と安全を確認し、無事に出産。私自身も、乳房全摘手術と抗がん剤治療を終えました。正直、、、、子供が生まれた嬉しさを感じる余裕は全くないくらい辛かったです。妊娠の継続を勧めて下さった先生方を恨みそうになるくらい、、、。でも今はすごく感謝しています!!!
で、質問なんですが、私の母は40歳で乳がんになり再発を繰り返してすでに死亡しました。母の姉と妹(私から見たら叔母)、母方の祖母、がそれぞれ乳がんになりました。今回、私も乳がんになって、遺伝性があるのでは?と気になりました。通院中の病院では検査できなかったので大学病院で検査をしてもらい、BRCA1という遺伝子に異常があることがわかりました。私は、一卵性の双子なので、とゆうことは、双子の姉も遺伝子異常があるということよね?と思い、姉に知らせ、姉も近くの病院で検査を受けました(結婚して離れて住んでいるので違う病院です)。
先日、姉の検査結果が返ってきて、姉の遺伝子には全く異常がないということ。
なのに、乳がん検診で、私と同じ、右乳に初期の乳がんがみつかり、再来週に手術するらしいのです。
親族の中に、乳がんの人はたくさんいますが、遺伝子検査をしたのは、私と姉だけなので、母や叔母の遺伝子はよくわかりません。
ただ、一卵性の双子だと、遺伝子は同じだと主治医から説明を受けた気がするのですが、違うのでしょうか?
あと、私は、体が落ち着いたら、反対側のお乳と卵巣を予防切除するかもしれません。卵巣はもう少し待ったほうがいいかもしれない、と主治医の先生には言われていますが、お乳は早めに切除します。
姉は、再来週、手術なんですが、その時に反対側も予防切除したら?と思ったんですが、姉の遺伝子に異常がないとゆうことは保険での予防切除は不可能なんでしょうか?いろいろ書きましたがよろしくお願いします。

妊娠中に乳癌と診断され、無事出産されて手術、抗癌剤治療も受けられたのですね。本当に大変だったかと思います。
質問者様は、BRCA1遺伝子に病的バリアント(遺伝子変異)があったのですね。お母さんが40歳で乳癌を発症され、母方のおばさん2人、母方のおばあさまも乳癌を発症されたとのことです。
一卵性のお姉さんも遺伝学的検査をされ、遺伝子の病的バリアントはなかったとのことで非常に疑問が残るところです。
質問の内容としては①どうして一卵性双生児なのに一方はBRCA病的バリアントがあり、他方はなかったのか。
② お姉さんは乳癌手術の際に、反対側の乳房切除はできないのか。
に対して私の意見をお答えします。
① まず、一卵性双生児は基本的には遺伝子は全く同じと言われているので、片方にBRCA病的バリアントがあれば、もう一方にもあるのが通常です。
 それから、驚かれるかもしれませんが、検査会社によって結果が異なる場合があります。以前は1社が独占的に遺伝子解析を行っていましたが、特許が切れたため、複数の検査会社、研究費による解析が行われるようになり、結果が異なることがあると最近わかってきました。
 以上のことから考えられることとしては、1)一卵性双生児ではなかった、2)遺伝学的検査を行った会社が違っていたためバリアントの解釈が異なっていた、があります。
詳しい話が聞きたいということであれば近くの遺伝子診療部があるところで相談いただくのが良いと思います。まずは主治医の先生に相談してみてください。
②2020年4月よりBRCA1/2遺伝子に病的バリアントがあり、遺伝性乳癌卵巣癌症候群と診断されれば、リスク低減手術が医療保険の適応となりました。
この適応となるためにはmyriad Genetic 社の検査で病的バリアントがあると報告された方のみとなります。
少なくとも遺伝学的検査で病的バリアントがないと報告された方に対しては、病気がない部分の手術に対しては保険診療ではできないことになります。(自費でも難しいでしょう)
 以上、少し解釈が難しい部分ですが、少しでもお役に立てればと思います。
文責:広島総合病院乳腺外科 梶谷桂子