70歳代の女性で脳梗塞で寝たきりです。左乳房に5センチくらいの乳がんが見つかりましたが治療した方がいいでしょうか?

2019年12月16日  , 

私は訪問看護ステーションに勤務する看護師です。患者様のご家族にご同意頂いた上で下記、相談させて頂きます。患者様は、70歳代の女性。脳梗塞を発症し、現在、要介護。食事や排泄などADL全般に見守りや介護を必要としています。
1ヶ月程前の入浴介助の際、左乳房外側上葉にパチンコ玉様のしこりをみつけました。その後、しこりは大きくなり、今はピンポン玉くらいです。看護師同士で「乳がんでは?」という話しになり、エコー検査で乳がんの可能性大(5.5㎝)と診断されました。ただ、患者様は上記のような状態であるため、受診や検査も大変でエコー以外の検査が出来ていません。また軽度認知症もあり本人様の協力や理解が難しい状況です。ご家族は、夫、50代の息子夫婦(別居で遠方)がいますが、いずれも、「もう高齢だから治療はしなくてもいいが痛い思いや苦しいことは避けてやりたい。そのためなら治療してやりたい」と言われています。実は患者様ご夫婦には、娘様が2人いらっしゃいましたが、長女様は30代後半(詳細不明)、次女様は48歳(昨年、うちのステーションで看取りました)、で、いずれも、乳がんでお亡くなりになりました。ですからご家族は、乳がんの辛さも治療の苦しみもよくご存知で大変悩まれています。ご家族の希望を主としたACPでは、1日も長く生きていて欲しい、そのためには多少の延命治療もしたいが最期は在宅で、と書かれていることから、今、乳がんの治療をするべきでは?というのが、私達、看護師の考えです。ご家族は、本人様が高齢者で要介護状態であることから、治療すべきかを悩まれており、次のステップに踏み出せずにいますが、私達、訪問看護師のことをとても信頼して下さっており、今回、判断を委ねられました。治療をするかどうか、の段階なので、相談にのって頂ける先生がいらっしゃらず、私達も安易には決められないため、ここに相談させていただきました。ご助言頂けますと幸いです。

在宅の現場で、真摯に現実に立ち向かっておられるご様子が伝わってきます。ありがとうございます。乳房のしこりが1か月で着実に大きくなっているようですし、エコー検査でも乳がんの可能性大とのことですね。ご家族も、現在関わっておられる医療者も、患者様に対して「いったい自分たちにできることは何なのか?」と、とても前向きなお気持ちでおられるように推察いたします。病院へ受診して、担当医や患者支援センターのスタッフとお話をしてみられたらいかがでしょう?そのほうが、患者様にとっても、残されるご家族や医療者にとっても、「しっかり考え判断した上で、最善の選択をすることができた」思えるのではないでしょうか。

 

文責:はつかいち乳腺クリニック 川渕義治

 

内容が重いので複数で回答させていただきます。現在5センチでこのスピードで考えるとあと数か月以内に皮膚に浸潤し出血が始まるのではないかと思います。そうなると出血のたびに家族が病院に連れて行ったり往診をお願いしたりで、在宅で介護するのが大変になるのではないかと思います。乳がんは皮膚に浸潤すると拡がるスピードが早く、QOLが低下する大きな原因になります。現在手術することで今後の在宅介護が楽になる可能性もありますので、川渕先生が書いておられるように、今後のことをきちんと病院スタッフと話しをされたらいかがでしょうか?今やるべき手術を嫌がって、将来大きな後悔になることもあります。今が考えどきですよ

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行