乳癌術後の抗がん剤治療について質問です。化学療法が必要でしょうか?

2020年6月6日   

乳がん全摘術後の病理検査の結果が出ました、浸潤径15ミリ、ITCあり、病期1期、リンパ管Ly1.組織学的異型度 3、ki67 70%、ホルモン受容体 陽性、HER2発現なしという結果でした。ki67 高値と異型度3という事で抗がん剤を推奨しますと言われ悩んでます、ステージ1なのでホルモン治療だけと思っていました。抗がん剤はタキサン系とアントラサイクリン系です、10年間生存率5.4%上乗せです。抗がん剤はうけるべきでしょうか?オンコタイプdx検査をしても高リスクの可能性が高いでしょうか?来週早々に決断しなければなりません、先生方のご意見をいただけますでしょうか

全摘手術を受けられたとのことで、頑張られたと思います。ステージ1なのに抗がん剤治療が必要か、というご質問ですね。

乳がん手術後の治療は、主にサブタイプに基づいて考えられます。「ホルモン受容体陽性、HER2陰性、Ki67高値、組織学的異型度3」ということで、luminal B-like(ルミナルBに相当)に分類され、一般的には抗がん剤が推奨されています。タキサン系、アントラサイクリン系の抗がん剤のいずれも再発予防効果が証明されています。

ご記載の病状であれば、どちらか片方の抗がん剤治療を受ける方も多いと思います。両方で5.4%の上乗せ効果であれば、どちらかの治療を受けていれば、もう1つの治療効果の上乗せ効果は1~2%程度にとどまると予想されるためです。最近では、タキサン系の治療(TC療法)も多く使用されています。

標準的には抗がん剤治療が推奨されることを承知いただいた上で、ですが、5.4%の上乗せ効果といいうことは、18人の方が抗がん剤を受けたとして、実際に抗がん剤治療のおかげで死亡を回避できる方は1人という計算になります。残りの17人は抗がん剤を受けても受けなくても結果は変わりません。この割合を、ご自身にとってメリットがあると思われる方は、抗がん剤治療を受けることを選択されます。少しでも死亡リスクを減らしたいという方は、タキサン系、アントラサイクリン系の両方の抗がん剤を受けられます。

どちらが正しくて、どちらが間違っている、ということはありません。他人がどうしているということも関係ありません。ご自身の価値観と相談して、よく考えてください。やはり悩んでしまう場合は、オンコタイプDX検査はよいツールと思います。必ずしも高リスクの結果になるとは限りません。ご自身で納得して治療に取り組まれることが大切です。

決断に時間が必要であれば、そのことを主治医の先生と相談されてもよいと思います。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 笹田伸介