乳頭乳輪を温存してもいいか迷っています

2021年5月16日   

癌のしこりから乳頭は離れているので、乳頭乳輪はのこしてもいいよと医師に言われました。(未練なければとってもいいともいわれました)
乳頭乳輪を残した際の再発率はやはり高まるのでしょうか。

医師には残してもいいが、断片陽性がでたらとるよと言われただけで、再発率に関しては特にお話がありませんでした。癌経験者の方は、再発や遠隔転移の可能性も出ちゃうから、取った方がいいといわれ、治療方針をどうしていいかわからなくなってしまいました。
ネットでは残しても、とっても再発リスクは変わらないと書いてあるものと、取った方が安全と書いてあるもの両方でした。
先生でしたら乳頭乳輪は取った方がいいとお考えですか。

結論から言いますと、乳頭乳輪を温存するかどうかは、病気の具合と患者さんの希望によりますので、唯一の正解はありません。

理論上は、乳頭部位の乳腺が残りますので、その場所からの再発の可能性はあります。しかしながら、経験則からのデータでは、実際に乳頭部位に再発する方は少ないと言われています。

十分に信頼に足るデータがないのが実情ですが、一般的には腫瘍を完全切除できることを前提に、乳頭乳輪を温存しても再発や予後を悪化させることはないと考えられています。

以下、乳癌診療ガイドラインの記載を抜粋します。

実際には、患者さんの希望に合わせて決めることが多いと思いますので、主治医の先生とよく相談されて決めてください。

『乳頭温存乳房全切除術(NSM)の適応についても,乳頭側の術中迅速検査が陰性であることなど各施設で基準が設定されており,腫瘍乳頭間距離が遠い症例に適応を限定するべきである。NSMによる生存率,局所再発率,遠隔転移に関しても乳房全切除術と比較しても有意差は認めず,根治性の低下は認められないと考える。しかし,乳頭乳輪壊死は全体で2.8%と多くはないが報告されている。また,乳頭部再発率も0~2.7%と非常に少ないが,厳密には乳頭乳輪の乳腺を残す術式であり,遺残した乳腺からの再発の可能性はわずかながら残る。』

 

文責:広島大学病院乳腺外科 笹田伸介