乳がんによる皮膚潰瘍で組織の壊死や臭いがひどいです。何か積極的な処置はありませんか?

2020年2月17日   

以前、花咲乳がんの患者様の皮膚潰瘍処置について質問させて頂きました。
お忙しい中、ご回答をいただき、ありがとうございました。
サイトにアップ頂いた回答を確認させて頂き、ステーションのスタッフでも再度、対応の方法を検討し、同時に地域のステーション協議会でも情報共有させて頂きました。先生から頂きました回答で、もう少し追加で質問させて頂きたく思います。白色ワセリンを塗布して乾燥を防ぎ、また、ガーゼを剥がす際に出血させないようにすることは早速、実践しておりますが、潰瘍化した皮膚のうち、部分的に壊死化した皮膚をデブリートメントしてしまうのはどうなのでしょうか?
訪問看護の場面では多くの褥瘡患者さんに出会い、進行した褥瘡の場合、看護師がデブリする場合があります(本来は医師の業務なのですが在宅では緊急時以外、医師の対応が難しいため看護師が医師の指示のもと対応しています。たぶん他のステーションの多くも同様と思います)。ただ、花咲き乳がんの場合、出血しやすいし、褥瘡と違い、がん細胞の塊?と考えると下手なことはしないほうがいいのでは?という意見もありました。潰瘍化した塊が非常に大きいため少しでもこの塊を小さくする方法があれば、と思うのですがいかがでしょうか?
今回の患者様はすでに余命宣告も受けており、受診にも消極的なので病院での処置は考えていませんが、例えば病院での治療も考えている花咲き乳がんの患者さんの場合だと手術によって皮膚潰瘍を切除したり、とかできるのでしょうか?
他のステーションの方の経験談で、潰瘍を切除したことで浸出液や悪臭が減り、QOLが向上した、という意見もありました。
あとは、内服の抗がん剤などを使用することで皮膚潰瘍を縮小化できたりはしますか?先生のおっしゃるとおり、この患者様は医療を受けることに消極的です。
その理由は定かではなく、私達看護師も在宅医の先生も苦慮することもあります。この場に及んで輸血や精密検査を受けたことにも疑問は多々あります。
ただ、在宅で最期を看取る立場を任された私達は、どんな事情があったにしろ、この患者様とそのご家族が少しでも苦痛が少ない状態で穏やかな最期を迎えられるよう努力したいと考えています。
患者様やご家族はもしかしたら、標準治療を受けなかったことをひどく後悔しているかもしれません。でももう今の状態で過去を後悔し苦しむ最期ではなく、少しでも苦痛少なく過ごして頂きたいと願うばかりです。
お忙しい中申し訳ございませんが可能でしたら追加でアドバイスを頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

患者さんの事を熱心に考えられておられ、頭が下がります。このような患者さんの場合、私はモーズペーストを使うことを考えます。モーズペーストは、病巣の感染のほか、病巣からの出血や浸出液よる汚染や悪臭に対応するために用いられることが多いのですが、ペーストが化学的に腫瘍の表面を凝固させることにより固めて、臭いやデブリードメンを行えます。気をつけなくてはいけないのは、腫瘍だけでなく周囲の正常な皮膚につくとそこも凝固してしまうので、とても痛いです。私は、腫瘍の周囲にワセリンをたっぷり塗ってから腫瘍にモーズペーストを塗り、凝固させてからデブリードメンしていました。私の時は、ずっと塗るのではなく30分くらい塗ってはモーズペーストを剥がしていましたね。

ポイントとしては、(1)最初は経験のある医師に処置してもらう、(2)一度にたくさん処置せずに少しずつ行う、(3)周囲の皮膚につかないようにワセリンを塗ってカバーしておく(土手を作るような感じです)、ですね。薬剤師さんが軟膏についてよく知っていると思いますので、相談してみてください

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行