卵巣摘出手術のタイミングはいつが良いでしょうか?

2021年1月23日   

昨年38才で、両胸全摘手術(ステージⅢa)を受け、抗ガン剤治療が終わりました。これから、放射線治療に入るところです。
遺伝子検査の結果、BRCA2陽性でした。夫とも話し合い、卵巣摘出手術を受けることにしました。手術はどのタイミングがいいのか悩んでいます。
手術するなら、BRCA1だと40才、BRCA2だと50才ぐらいまでにというような目安だと聞いたのですが、既に乳がんが発症していて卵巣に再発しやすいのであれば、早めにした方がいいのではと思っています。例えば放射線治療の後すぐでは早いと思われますか。ホルモン治療を数年やった後の方がいいとかありますか。ちなみに今のところMRIでは卵巣の異常無しです。
あと、卵巣摘出すれば、ホルモン治療の必要も無くなるのでしょうか。

術後化学療法が無事終わられ、続いて放射線治療と、心身ともに大変でらっしゃったかと推察します。放射線治療が終わられたらホルモン療法内服となりますので少しずつ落ち着かれると思います。また、ご自身のがんの性格はホルモン感受性あり(ER+かつ/またはPgR+)でらしたのでしょうか?
既によくご存知の通り、BRCA2病的変異をお持ちのHBOCの方では50歳から卵巣がん(これは乳がんの転移ではなく、卵巣から起こってくる別のがんです)が増えてくることがわかっています。そのため、遅くとも50歳までにはリスク低減卵巣卵管切除術を検討されることが推奨されます。放射線治療が終了し、お身体が落ち着かれたらご希望に合わせていつでも検討なさってよいことになります。
幸い、現在のところ卵巣には異常がないとのことであれば至急の手術ではないですが、ご希望であれば手術の意思は担当医にお伝えになってもよいと思います。
もう一つの要素としては、乳がんの病状から乳がん治療に関して今後の2~3年がまず一つの大切な時期と考えられます。ご年齢からは閉経前のホルモン療法である「タモキシフェン」内服が最長10年間推奨されます。卵巣を摘出し閉経しても(現在も化学療法によって整理の回復はまだない状態でらっしゃると思いますが)、体の中で男性ホルモン(副腎から分泌されます)からアロマターゼ酵素によって変換された女性ホルモンが補充されていますので、ホルモン療法は引き続き必要です。まだ30代でらっしゃることを考えますと、40歳以降にHBOCのリスクと向き合われても遅くないかもしれません。
担当医とよくご相談なさってください。
文責:広島大学病院乳腺外科 恵美純子