生きられる年数について

2021年7月20日   

乳がんの骨転移の場合、10年、20年生きられるってことはないと、主治医の先生は言っていました。本当に、可能性はないのでしょうか。
現在34歳です。昨年3月に妊娠中に乳がんが発覚しました。診断を受けた時は既に腰、背骨、骨盤に転移していました。妊娠中はパクリタキセルを使いました。(妊娠中に一番使われる抗がん剤については、過去の白血病の治療で使用済みだった為。)出産後、アナストロゾールの服用と月一のゾメタ点滴、3ヶ月に一度のリュープリン注射で治療。放射線は背中と腰にあてました。骨盤は痛みがでていなかったのであてていません。背中はつぶれるのを少しでも阻止する為、金属を入れる手術もしました。現在は骨折予防の為に車椅子で生活しています。今年の4月に肝臓転移があり、アナストロゾールからベージニオに薬が変わりました。肝転移のその後の経過はまだみていません。
以上のような状況です。ベージニオが使えなくなったらあとは抗がん剤治療と聞いています。このような私が、あと20年以上、生きられる可能性はどのくらいありますか?今までに骨に転移していても20年以上生きている人はいませんか?あるいは、もっと長生きにつながる最善策がありますか?子どもも小さいですし、少しでも長く生きたいのです。

妊娠中の乳がんの診断がつき、多発骨転移のあるステージ4に対しての治療と、ご出産、育児とで、色々と不安になられると思います。まずは、再発後の生存期間ですが、日本の最近のデータでは、ステージ4乳がんと2002年~2006年の間に診断されたかたの10年生存率は14.7%です(診断されて治療開始後10年以上経過しないと10年生存率はでてこないので、診断された時期は15年以上前になります
)。15年間で新しい治療薬はたくさん使えるようになっています。今使っておられるベージニオも2018年から使えるようになった薬です。このように、新薬の開発によって、ステージ4(もしくは遠隔再発後)の生存率は改善しており、質問者のようなルミナールタイプ(ホルモン受容体が陽性)では、2000年頃に比べて、最近は1.8倍生存期間が長くなったというデータもあります。実際には、骨転移があっても10年以上お元気に治療に通っておられるかたもおられます。20年以上のかたもおられます。
「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」という本をお持ちでしたら、2019年版のp150をご覧ください。ステージ4または遠隔再発があるかたが、不安になったときの「気持ちの整理のしかた」についてまとめてあります。
1 「がん=死」と思い込まないようにしましょう。がんの治療法は日進月歩です。
2 信頼できる方に気持ちを打ち明けてみましょう。患者会に参加してみるのも一つの方法です。積極的に周囲の方からの心のサポートを受け、自分の気持ちをコントロールする力を高めましょう。
3 リラクセーションや音楽といった、気持ちをリラックスさせるような方法を積極的に利用しましょう。
4 こころの専門家に相談することをためらう必要はありません。それは精神的に弱いということではなく、がんとうまく取り組むための賢明な行動といえます。
決してあきらめず、こころをリラックスさせて治療にのぞむのが大切です。

 

文責:香川乳腺クリニック 香川直樹