男性乳がんと診断されましたが、手術ではなくてまずホルモン療法をと説明されました。手術をしなくて良いのでしょうか?

2021年1月9日  , 

50歳男性です。2020年11月に受けた胸部CTにて右乳腺腫瘍が疑われ、12月初めに個人医院にてエコー、マンモ、針で組織を取る検査を行い、乳癌を宣告されました。12月中旬に紹介された大学病院にて再びエコー、マンモ、さらに血液検査、造影剤を入れてCTを撮りました。その結果、ER陽性、PGR陽性、HER2陰性、Ki低いと言われ、ステージ1とのことでした。ステージ1といえども近いうちに手術をするのかなと思っていたのですが、2月中旬までタモキシフェン20mgを服用して、癌に効果があるかどうか見極めたいと言われました。タモキシフェンが効果なければ別の薬を試すようで、手術は半年先のようなことを言われ拍子抜けしました。

手術もせずにしばらく薬だけの治療で構わないのか、その間に癌が進行してステージが上がらないのかとても心配しています。

ご質問ありがとうございます。

男性乳癌(ホルモン陽性、HER2陰性)ステージ1ですので、まず手術(右乳房切除術(全摘)+センチネルリンパ節生検)を行って、再発防止目的に術後補助療法としてタモキシフェン5年内服を行うことが標準治療です。

乳癌診療ガイドラインでは、女性の場合、術前ホルモン療法は推奨されてはいません。男性乳癌の場合のエビデンスは乏しいですが、女性の乳癌に準じて治療を行うとすれば、男性でも通常術前ホルモン療法は行いません。

何か、手術を半年先まで延ばさなければならない理由があるのでしょうか?新型コロナウイルス感染症蔓延期でも、感染対策を講じて通常の診療を行っている病院は多いです。

尚、日本外科学会から出されている「新型コロナウイルス感染症蔓延期における外科手術トリアージの目安」によると、医療供給体制がひっ迫していれば、早期癌では、可能なら手術延期ということになります。医療供給体制が安定していれば、適切な感染予防策を講じて手術を行います。

手術でなく術前ホルモン療法を行っていることは標準治療ではないと思いますので、延期理由を主治医にお伺いされたらいかがでしょうか?

 

文責:尾道総合病院乳腺外科 吉山知幸