腫瘍マーカーのNCC-ST439が少し上がってきました。再発の可能性が高いのでしょうか?

2021年1月30日   

2020.7月右上外乳癌ステージ2で全摘、その後腹直筋の脂肪からの同時再建手術をしました。脂肪が壊死して、化膿して、皮膚にかなり深い穴ができ、傷が塞がるまでに、半年近くかかりました。いまも、再建した胸の変形、ひきつれ、しびれはあります。
その後の治療としては、リンパ転移もなく、抗がん剤も化学療法もいらないタイプで、ホルモン剤を服用しています。乳腺外科の定期検診で、NCC-ST439が、手術後、2ヶ月で、13まであがってて、先日の検査、半年後19にまであがってました。主治医は、大きな手術したあとに、炎症もあるから、あがる人いるけど、だいたい大丈夫よといわれますが、どんどんあがっており、とても心配です。そういうことはよくあるのでしょうか?回答いただけるとありがたいです。

 

 

 

腫瘍マーカーについては、多くの方が質問され、やはり色々な心配が集中する分野です。上がり下がりによって一喜一憂されるお気持ちもわかります。一緒に腫瘍マーカーについて考えてみましょう。

乳がんの腫瘍マーカーは、CEA,CA15-3が多く用いられ、施設によってはこれにNCC-ST439を加えています。腫瘍マーカーは、がん細胞がつくる物質、またはがん細胞などに反応して正常細胞がつくる物質のことで、血液中に含まれます。採血して、この物質がどのくらいあるかを調べます。高ければ、がん細胞の量が増えている可能性があると判断し、再発を疑うのですが、腫瘍マーカーの問題は、良性疾患や炎症などでも高い値になることです(がんが再発していないのに高値になるということ)。

CEAは喫煙や肝疾患、NCC-ST439では婦人科疾患、月経周期や肝・胆道疾患でも高値になることが知られています。また、CEAは年齢とともに上昇することも知られています。

色々なガイドラインでは、腫瘍マーカーによるフォローアップは奨められていません。しかし、実臨床ではこれを指標として検査をおこなったりします。CEAやCA15-3は再発症例の約半数で上昇するとされていますが、最近のデータでもCEAやCA15-3が上昇した症例のうち、約2/3に遠隔再発があり、13%に他癌があったが、1/5では、再発も他癌もなかったというデータがあります。一方でNCC-ST439は前述したように、がん以外でも高値になることが比較的多くみられます。閉経前なら月経周期で変わりますし、婦人科の良性疾患でも高値になることが多く、惑わされるだけになることが多いので、わたしは検査項目に入れていません。

考え方としては、複数の腫瘍マーカーが同時に高値になり連続して上昇していたり、CEAやCA15-3が連続して上昇していたりすれば、検査も考える。NCC-ST439単独の上昇は、婦人科疾患などもチェックしながら、しばらく値の変化をみていくので良いと考えます。

腫瘍マーカーが上昇すると、気にはなると思いますが、値の変動や他疾患、他の採血データなども参考に、一喜一憂せずに、主治医の先生と相談されるのが良いと思います。

 

文責:香川乳腺クリニック 香川直樹