術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検を省略したいのですが

2022年2月18日   

乳腺専門医3人から、Stage IIAの浸潤性乳管癌で臨床的リンパ節転移は陰性と診断され、フルコースの術前化学療法で腫瘍はほぼ消失し、石灰化が残った病変を切除する手術となりました。
乳癌診療ガイドラインでは、術前化学療法前後で臨床的リンパ節転移「陰性」乳癌に対して腋窩リンパ節郭清省略を目的としたセンチネルリンパ節生検は「弱く推奨する」とあり、センチネルリンパ節生検を実施しない施設もあることから、必要最低限の手術以外は受けたくないため、術前に同意書と一緒に手術の説明を受けた際に、センチネルリンパ節生検は省略して病変の切除を強く希望しました。すると、主治医から、センチネルリンパ節生検を行わないのであればリンパ節を全部切除しますと言われました。
最後の化学療法を終えて1か月が経過しており、腋窩リンパ節郭清は後遺症があるがセンチネルリンパ節生検は後遺症がないと説明があり、これから2ndオピニオンや転院を望んだ場合に奏効した病変が悪化する不安や、他院からの紹介で本院にきたことなどから、やむなくセンチネルリンパ節生検を受けました。
術後の結果、切除されたリンパ節は4個、すべて陰性でした。教科書や専門書を調べると、通常の切除数は1-2個(平均2.2個)、後遺症は稀となっています。しかし私の場合、3カ月もの間、リンパ浮腫と上腕の引き攣れとしびれが生じ、その後も指(親指、人差指、中指、薬指の一部)のしびれと感覚異常が続いています。
複数の専門医からリンパ節転移の疑いはないと診断され、実際にすべて陰性だったこと、生検は望んでいなかったこと、後遺症が残ったこと、乳癌診療ガイドラインでは弱く推奨となっていることなどを考えると、センチネルリンパ節生検を受けない選択をしてもいいのではないかと考えてしまいます。

1.      術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検は、受けなくてはならないのでしょうか。生検を受けない選択はできないのでしょうか。
2.乳癌診療ガイドラインは、医師からどのように参考にされているのでしょうか。
3.手術日や入院日が決まり、手術内容に同意できない場合、2ndオピニオン、転院はできるでしょうか。
4.2ndオピニオンや転院を主治医に相談した場合、気分を損ねて良質な医療を提供してもらえなくなることはありますか。

術前化学療法をしたのでセンチネルリンパ節生検をやらないというのは、現在のところ標準治療ではありません

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/2018/index/gekaryoho/g2-cq-5/

CQ5a 術前化学療法前後で臨床的リンパ節転移陰性乳癌に対して腋窩リンパ節郭清省略を目的としたセンチネルリンパ節生検は推奨されるか?に対して、

・腋窩リンパ節郭清省略を目的としたセンチネルリンパ節生検を行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:弱,合意率:83%(10/12)〕

となっています。これは「センチネルリンパ節生検を行わないことを弱く推奨する」のではなく「行うことを弱く推奨する」ですので、やらないでもいいというわけではありません。広島大学病院でも行っています。全国でも行う施設が多いと思います。また、親指、人差指、中指、薬指の一部のしびれと感覚異常が出たとありますが、センチネルリンパ節生検でその神経あたりを損傷することはありません。通っている場所がまったく違います。神経障害があるとすれば、二の腕の内側の知覚くらいでしょうか

1.      術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検は、受けなくてはならないのでしょうか。生検を受けない選択はできないのでしょうか。

→広島大学病院では拒む患者さんに無理やりはしていません。自己責任の上でセンチネルリンパ節生検を受けないことはできます。ですので、今回はどちらが正しいかというよりはご自分が希望したのに無理やりされた、ということを問題にされているのではないでしょうか?

2.乳癌診療ガイドラインは、医師からどのように参考にされているのでしょうか。

→約6〜8割ガイドライン通りと考えている先生が多いと思います。日常臨床は、ガイドラインだけでは対応できません

3.手術日や入院日が決まり、手術内容に同意できない場合、2ndオピニオン、転院はできるでしょうか。

→手術に同意できなければ手術はできません。その場合、転院した上でその後は転院先で治療を受ければいいと思います

4.2ndオピニオンや転院を主治医に相談した場合、気分を損ねて良質な医療を提供してもらえなくなることはありますか。

→それはその先生次第です。医者は患者を選ぶことはしませんが、患者は医者を選べます

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行