乳がんの術後治療としてホルモン療法と経口抗がん剤を併用することを勧められましたが有効なんでしょうか?

2020年2月17日  ,, 

先日、初発ルミナールAステージ2のB、全摘、リンパ節転移一個、オンコタイプしてないという方と知り合いました。放射線治療したら、ホルモン療法と経口抗がん剤もやるとのこと。最近は再発転移してないのに経口抗がん剤するケースが増えているのですか?

乳がんの術後治療としてホルモン療法と経口抗がん剤を併用する治療は過去に行われていたこともありますが、エビデンスが不十分なため、現在行われることは少ないと思われます。しかし、ホルモン療法と経口抗がん剤(S-1)の併用効果を検証する目的で2012年~2016年に日本で行われた多施設共同の第III相臨床試験(POTENT試験:139施設からStageI~IIIBのホルモン陽性かつHER2陰性再発リスク中~高の乳がん患者1,959例 (リンパ節転移状況は問わず)が参加)の中間解析の結果が昨年の12月の国際学会(サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019))で発表されました。この発表では、追跡期間中央値51ヵ月時点の5年時の再発率はホルモン療法+経口抗がん剤(S-1)群:86.9%ホルモン療法単独群:81.6%で、経口抗がん剤を併用することで再発のリスクを39%低下させることが統計学的に示されました。経口抗がん剤であるS-1の副作用として好中球減少、肝機能障害、消化器症状、色素沈着などが報告されましたが、いずれも対応は可能でした。

この結果により、将来的に日本ではホルモン陽性の再発リスク中~高の乳がん患者さんではホルモン療法に経口抗がん剤(S-1)を併用することがエビデンスのある治療として行われることが予想されます。おそらく知人の方の担当医の先生もこの臨床試験の結果をもとにホルモン療法と経口抗がん剤の併用を推奨されたのでしょう。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治