術後のHER2陽性化と治療方針について

2022年4月2日   

妻が乳がんの治療で針生検でホルモン陽性HER2陰性の結果のもと、術前化学療法でAC療法とパクリタキセルを投与しました。手術で摘出した細胞を調べたところHER2が陽性に変化?していることがわかり、追加でハーセプチンとパージェダの投与することとしています。上記の分子標的薬は抗がん剤と併用することで、奏功率が上がると認識していますが、既に抗がん剤投与を終えているので分子標的薬のみでも効果は期待できますでしょうか。

針生検は腫瘍の一部をみているに過ぎないので、術前と術後のHER2蛋白の発現が異なる結果になった可能性があります。また、術前化学療法により腫瘍のタイプがHER2陽性に変化することも稀にあります。

そのような場合に、2つのポイントで術後化学療法を考えています。1つ目は、術前化学療法の効果(手術でとった組織に腫瘍細胞がどの程度みられたか)、2つ目は、もし治療前にHER2陽性と判っていた場合、どのような治療を選択するかです。特に1つ目が重要です。当院で同じような患者さんがいらっしゃった場合、術前化学療法により腫瘍細胞がほぼ消失していればハーセプチン、パージェタで十分と考えますし、多く残っている状況であればカドサイラ(ハーセプチンと抗がん剤の複合体)の投与を検討しています。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子