非浸潤性乳管癌に対して手術をしないという臨床試験があるそうですが教えてください

2021年9月11日   

10年前から、マンモグラフィにて石灰化が見られていて、年に一度の定期検査を受けていました。これまでも、何度か針生検も受けてきたのですが、良性…と判断されていました。しかし、今年、マンモトーム生検をした結果、非浸潤性乳管癌が見つかってしまいました。
病理の結果は以下の通りです。
DCIS 波及度: g(+) グレード: NA 1,  MC 1 → NG 1
in situ (+): flat 石灰化(+): in situ 内の分泌型石灰化

バイオマーカー
ER: PS 5, IS  PgR: PS 3,  IS  HER2:  1+
Ki67: Low (<1%, hot spot)

主治医は、
◯上記の病理検査で、私の癌が非常に大人しいタイプであること。
◯これまでの10年間の石灰化の広がりが、殆ど変わらないこと(2センチに満たないサイズ)
◯造影MRI では、石灰化が映らなかったこと(マンモトームのマーカーだけが写っていたとのこと)
◯手術するとしても、全摘する必要はなく、部分切除で十分であるが、私の場合、若い時に悪性リンパ腫を罹患しており、その際に胸に放射線治療をしているので、さらに、放射線治療を加えるのはNGであること。

などから、今すぐに手術をする必要はなく、年に一度の経過観察を継続して良い…との判断でした。もちろん、私が手術を希望すれば、対応しますとのことですが、このコロナ禍に急ぐ必要はないし、このままきちんと経過を観察していれば、動きがあったときすぐに対応しても手遅れにはならないし、そもそも『悪さ』を起こさない可能性は大きいと。

私は、手術しないでよいのであれば、それはありがたいと思う反面、非浸潤ではあるものの、『癌』と言われていながら、そのままにしていてよいのか不安です。

私の病理結果は、自分ではよくわからないのですが、本当に『大人しいタイプ』なのでしようか?

急ぐ必要がないとはいえ、どのような『動き』が見られたときには、すぐに手術したほうがよいのでしょうか?それは、マンモグラフィや、エコーで判断できますか?

また、JCOGの治験の存在も知りましたが、個人的には、クスリの副作用を考えると、あまりタモキシフエンの服用はしたくない…と思っています。それでも、何もしないよりは良いのでしょうか?(主治医は、効果はさほど期待していないようでした)

非浸潤性乳管癌については、色々議論があるようですが、『見つかったら切る』というのが、標準治療…とされている中で、すぐ切らないでよいのか、ご意見いただけるとありがたいです。

JCOG1505試験というものが現在、行われています。簡単に言えば「大人しい非浸潤癌を切除せずにホルモン療法だけで経過をみる」という試験です。大人しいという条件に、ER陽性、HER2陰性、グレード1もしくは2というものが含まれていますが、これに腫瘍の範囲が2センチ以下であれば臨床試験に該当します。

だから臨床試験に参加しましょう、というわけではありませんが、それくらい低悪性度と考えられているということです。臨床試験に入っても定期的にフォローしますので、大きくなったのであれば手術に切り替えることもできます。悪性リンパ腫で放射線治療ができないのであれば、尚更、質問者には向いているように思えます。

もちろん手術しても良いですので、両方の選択肢を考えられたらいかがでしょうか?

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行