28ミリの浸潤がんですが、手術をせずに陽子線治療だけではいけないでしょうか?

2021年7月26日   

浸潤がんで28ミリと言われています。
転移はないようです。これから手術をうけるのですが、陽子線の治療についてご質問します。たまたま生命保険で先進医療特約をつけていた関係で、陽子線の治療があることがわかりました。もしその治療ができるなら、手術+放射線と比べるとどちらがいいでしょうか。
私自身は、治るなら傷をつけない治療がいいと思っています。
ご専門家のご意見をお聞かせいただけないでしょうか。

ご質問ありがとうございます。

早期乳癌の標準治療は、ご質問にあるように乳防温存手術+術後放射線治療、もしくは乳房切除術になります。現在、様々な非切除療法(切らずに治す方法)の研究が行われていますが、いずれも臨床研究の段階です。粒子線にはご質問にある陽子線と重粒子線がありますが、粒子線による乳癌治療も同様に臨床研究の段階であり、現時点では、陽子線または重粒子治療単独で温存手術+術後放射線治療と同等の治療効果が期待できるかは不明です。

したがって、切らずに治したいというお気持ちはよくわかりますが、根治性という点からは、手術+放射線治療をお勧めいたします。なお、乳癌に対する陽子線治療は保険診療の適用外であり、陽子線での治療を強く希望される場合には、該当施設を受診し、その得失についての説明をよく聞いていただき、十分に理解された上で選択いただく必要があると考えます。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの