血性乳汁分泌が続きます。今の時点で乳管造影を行い、腫瘍が良性か悪性か判断する事は出来ないのでしょうか?

2020年10月23日   

年の1月に、乳がんのセルフチェックをしていた際に、右側の乳頭から黒っぽい分泌物がありました。その時は一度出たきりで、その後は何度絞っても出ませんでしたが、念の為、いつも行っている病院を受診しました。結果は、分泌も止まっていてエコーも異常ない事から、経過観察になりました。

私は高濃度乳腺で乳腺症の為、先生の勧めで、年に一度のマンモグラフィーと、半年に一度のエコー検査を受けています。4月にも定期検査でマンモグラフィーとエコー検査を受けましたが、右側に嚢胞がある以外は異常なしでした。が、1週間程前に下着に血がついているのに気づき、絞ってみると今度は絞る度に黒っぽい血が出てきます。いつもの病院でエコーをして頂きましたが、エコー上は特に明らかな異常は無いと言われ、現在分泌物の検査の結果待ちです。

血性の分泌は、乳管内乳頭腫か乳がんとの説明でしたが、エコー上で明らかな乳頭腫と思われるものが見られない場合、乳がんの確率も低いと考えて良いのでしょうか?また、分泌物の検査結果で異常なければ、半年後のマンモ、エコーになりますが、血性の分泌は続いており、放置する事に不安があります。
今の時点で乳管造影を行い、腫瘍が良性か悪性か判断する事は出来ないのでしょうか?

質問ありがとうございます。
 片側の血性乳汁分泌があり、エコー(超音波検査)とマンモ(マンモグラフィー)では原因となる病変が描出されない状態のようですね。一般的に血性乳汁分泌の原因病変として乳管内乳頭腫(良性)、乳がん(悪性、ただし多くはごく初期の状態)、乳管拡張症(良性)、乳腺炎(良性)などが考えられます。多くは乳管内乳頭腫ですが、血性乳頭分泌がある方の3割程度に乳がんが見つかるとの報告もあります。閉経前の方のほうが良性病変の可能性がより高い傾向があり、逆に閉経後の方のほうが乳がんの可能性がより高い傾向があります
 症状・画像のみで診断をつけることが可能な場合もないわけではありませんが、多くは確定診断のためには病理学的検査(顕微鏡での検査)が必要です。その方法として乳頭分泌液の細胞診や、画像検査で指摘された原因病変の細胞診または針生検・摘出生検があります。受診時に乳頭分泌がなく、画像検査で病変もわからないときは私の外来でも半年ごと(場合によっては1年ごと)の経過観察として数年間にわたって経過を見させてもらっています数年にわたって経過を見ているうちに病変がすこしずつはっきりしてきて乳がんが見つかることもあるからです。その場合でも、ほとんどはごく初期の乳がんであり病変を手術で取り除くだけで完全に治すことができる状態です。
 今回は異常が血性乳頭分泌のみでありその細胞診を受けられたとのことですが、 エコーやマンモで明らかな原因病変がみられない場合でも細胞診が「悪性」や「悪性疑い」、「鑑別困難」などの結果の場合は治療をすべき乳がんが存在する可能性が高いと判断してさらなる画像検査を行います。MRIの性能が悪かった時代はマンモを使った乳管造影などが行われていましたが今は 通常はMRIを行い存在診断をします。「良性」「異常なし」の場合は、 数年にわたって経過を見ているうちに病変がすこしずつはっきりしてきて乳がんが見つかることもあるため、エコーとマンモでの経過観察となります。
 さてご質問のお答えですが、
①血性の分泌は、乳管内乳頭腫か乳がんとの説明でしたが、エコー上で明らかな乳頭腫と思われるものが見られない場合、乳がんの確率も低いと考えて良いのでしょうか?
 A. 乳管内乳頭腫は良性の病変であり乳がんとは別の病変です。それぞれに教科書上の特徴はありますが、画像診断だけで確実な診断はできません。また乳管内乳頭腫と乳がんが混在していることも少なからずあります。「エコー上で明らかな病変が指摘できない場合、乳がんの確率も低い」と言っていのかもしれませんが、厳密には「 エコー上で明らかな病変が指摘できない場合、 現時点で乳がんと診断できる病変がないため乳がんの確率が低い」という言い方のほうが正しいのかもしれません。経過を見ていくうちに病変が指摘され、初期の乳がんと診断される可能性もあるので経過観察が大切です。
②分泌物の検査結果で異常なければ、半年後のマンモ、エコーになりますが、血性の分泌は続いており、放置する事に不安があります。
 A. 現時点で実施可能な必要な検査はされているようですので、きちんと経過観察のための受診を継続することが大切です。
③今の時点で乳管造影を行い、腫瘍が良性か悪性か判断する事は出来ないのでしょうか?
 A. 病変の詳細な存在診断は画像の進歩に伴って乳管造影検査を行うよりもMRIを行うことが今では一般的です。ただしMRI、乳管造影検査も含め画像診断だけで 腫瘍が良性か悪性か正確に判断する事は困難と思われます。エコー、マンモ、MRIで病変が指摘できなくて乳管造影検査のみで病変が見つかり、乳管内視鏡を挿入して病変を生検することができ、確定的な病理学的診断をすることができたという経過になる可能性は極めて低いと思います。
文責:島の病院おおたに乳腺外科 安井大介