タモキシフェン服用中です。妊娠を希望していますが、今後、月経、排卵が再開して妊娠できるでしょうか？

2022年1月13日　　　

抗がん剤治療後から1年8ヶ月経ち、生理が再開しました。30日周期で2回目もありました。現在タモキシフェン服用中です。将来子供を授かれる可能性があるか、今の卵巣機能がどうなっているのかを伺えたらと思い不妊治療専門の病院を受診しました。(癌の進行を進めてしまう可能性を危惧し、主治医の先生からは抗がん剤治療前妊孕性は勧められませんでした)

35歳で卵子凍結しても5%程度しか妊娠の可能性はなく、自然妊娠可能性は更に低い。タモキシフェンを服用している以上あなたは今閉経後のおばちゃんと同じ状態。無月経は当然。と仰いました。タモキシフェン服用中は排卵が起こることはないのでしょうか？となれば今の出血は不正出血でしかないのでしょうか。可能性は低い事は重々承知ですが、タモキシフェン服用後に高齢出産される方もいらっしゃるのでしょうか？

乳癌治療を頑張っておられますね。
ご質問ありがとうございます。
不妊治療ご相談の際の医師からの言葉かけ内容は、そのままであるとすればご自身には辛い内容であったかと思い胸が痛みます。不妊治療専門の医師であっても乳がん治療に詳しいとは限らないかもしれません。
ご質問者と同じように、抗がん剤治療で一時的に卵巣機能が抑制されて『化学閉経』となったとしても、30代の方では多くの方が化学療法終了後1年程度で月経が再開するほどに卵巣機能が回復します。ただし、抗がん剤後にタモキシフェンを内服されている場合には再開の時期が遅れたり、不規則な出血になる方もおられます。また、月経が再開していてもちゃんと排卵があるかどうかは専門医で検査をなさらないとわからないかと思いますが、自然妊娠される可能性ももちろんありますので、タモキシフェン内服中には催奇形性の問題などからちゃんと否認していただく必要があります。
5年～10年のホルモン療法予定でしょうか。
早期にホルモン療法を中断するなどして妊娠を希望する場合の再発リスクに関しては、今、日本でも臨床試験が登録終了し観察しているところで結果が待たれています。化学療法終了後1年8か月ということは、あと3年ほどホルモン療法が少なくとも継続されるのだと推察します。例えば、5年目の区切りで妊娠を希望されるかどうか、ご自身の病状を踏まえて今からでもよいのでパートナーや乳腺専門の担当医師としっかりご相談なさったら良いと思います。
当科ではホルモン療法は行っておられない方でしたが40歳を過ぎて凍結保存しておいた胚移植を受け妊娠出産されたかたもおられます。
生殖医療に関して担当医とよくご相談できない場合は、妊孕性温存に詳しい施設にセカンドオピニオンを受けてご自分の状況を確認されるのもよいかもしれません。
文責：広島大学病院乳腺外科　恵美純子