トリプルネガティブの術前化学療法について教えてください

2020年8月17日   

6月上旬、しこりを見つけ受診しましたが、細胞診、針生検では診断がつかず、7月半ばに摘出生検にて癌が確定しました。

・腫瘍の大きさ 肉眼的:6mm 顕微鏡的(全体:15x17mm 浸潤巣:5x4mm)
・トリプルネガティブ:グレード3(Nuclear atypia:Score3 Mitosis:Score2)
・#4の1側方は1mm程度幅でDCIS陽性、#5にもDCIS巣が見られ陽性の可能性あり

断端陽性のため、8月下旬に全摘手術、9月下旬に抗がん剤を開始します(EC療法)
「術後化学療法の遅れによるトリネガ乳がんの転帰不良(発信元:米国がん学会(AACR)」という記事(www.cancerit.jp/61757.html)を読んだのですが、トリプルネガティブは手術完了後、30日以内に化学療法開始することが優先事項で、30日以降は化学療法の有効性が著しく低下するとありました。私の場合、原発巣を摘出した7月半ばを基準日とすると、60日以降になってしまいます。また、トリプルネガティブの場合は最近ではしこりが小さくても、術前化学療法を行うほうが治療成績がよくなるという記載も見ました。

そこでご質問なのですが、
1.私の場合、抗がん剤が手術後でも大丈夫でしょうか。手術より先に抗がん剤を行ったほうがよいのでしょうか。

2.6月上旬ではリンパの腫れはなかったのに、8月上旬のCT検査でレベル2までのリンパ節の腫れが見つかりました。
また、CTの画像上、摘出手術した場所の近くに白くもやっとした場所もあり、それも癌だと言われています。
急に進行してしまっている気がするのですが、癌は手術操作により転移が促進することがあるとの記事をみましたが本当でしょうか。

3.こんなに早くレベル2までのリンパ節に転移してしまうものなのでしょうか。脇の下がここ何日か痛みが継続しています。2年以上前に閉経しており、乳腺症とは思えないのですが、これはリンパ節転移による痛みでしょうか。

悪性度が高い癌のため、怖くてたまりません。

ご質問ありがとうございます。術後にリンパ節転移が出て、不安な気持ちでいらっしゃることとお察しします。質問者様の状況は、浸潤巣:5x4mmと腫瘍の大きさは小さいですが、リンパ節転移もあり、個人的には術前化学療法を先に行うのが良いかと思います。ご指摘の「術後化学療法の遅れによるトリネガ乳がんの転帰不良(発信元:米国がん学会(AACR)」という記事ですが、単一施設での後ろ向き試験なので、エビデンスレベル(信頼度)の点では、治療を30日以内に始める患者さんと30日以降に始める患者さんをランダムに振り分けて比較するような試験と比べると劣ります。詳細はわかりませんが、例えば術後すぐに治療が始めれないような身体的な理由があったのかもしれません。一般的に、トリプルネガティブ乳癌の場合、術前治療により腫瘍が完全に消失(pCR)していれば予後は良好で、術前治療の効果により再発リスクを予測することができます。一方で腫瘍が残っていれば、さらに半年間カペシタビンという抗がん剤を追加することで、より再発を抑えられる可能性があります。ご質問の2,3についてですが、術後の炎症によるものかもしれません。

主治医の先生に不安な気持ちを伝えて、納得して治療が受けれるよう相談してみてください。治療がうまくいくように応援しています。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子

 

追加:このサイトにはトリプルネガティブ乳がんの項目もありますので、これまでの質問も参考にしてください(広島大学病院乳腺外科 角舎学行)