マンモトーム生検で飛び散ったがん細胞は増殖しないのでしょうか?

2020年7月7日  , 

マンモトーム生検、針生検を何度か行った者です。上手く採取できずに回数を重ねてしまいました。生検の安全性を聞いていたので安心していたのですが、下記のような論文があると聞き、急に不安になりました。

『手術前に行った組織生検(針生検、マンモトーム生検、開創生検など)によってこぼれた乳癌細胞が偶然リンパ管に入り、リンパ流によってリンパ節に流れ着いた・・・。
組織生検の回数が増えることで転移陽性率も増えるということは、組織生検という機械的な侵襲が癌細胞がリンパ管に入りこんでリンパ節に流れ着くことに関係しているのではないかと推察されています。』

そこでお聞きしたいのですが、飛び散った癌はその場で死滅して増殖はしないのでしょうか?それとも、その場で癌として成長してしまうのでしょうか?

近々、エコーを受ける機会があるのですが、その際、押したり動かしたりしますが、そのようなことでは生検後の傷から癌が飛び散ることはないでしょうか?
検査自体が不安です。また、日常生活で気をつける点がございましたら、教えてください。生検後、時々鈍痛がします。精神的なものかもしれませんが・・

説明させて頂きました研究論文では、手術後の病理検査で浸潤癌を認めずDCISの最終診断であった患者さんでは、センチネルリンパ節転移陽性ではあっても孤立性腫瘍細胞(ITC:0.2mm以下の微小な細胞集団)が78.6%(44/56)、微小転移(2mm以下の小さな転移)が21.4%(12/56)であり、マクロ転移(2mmを超える大きな転移)はありませんでした。5年での無病生存率(DFS: Disease free survival)も100%ですので再発する可能性は極めて低いと考えられます。また、相談者の方のようなケースでは正常な乳房のリンパの流れは保たれていますので、センチネルリンパ節以外の腋窩リンパ節に癌細胞が転移していることも考えにくく、乳癌細胞が腋窩に遺残している可能性もほぼないと考えられます。

 相談者の場合、センチネルリンパ節にITCを認めたということですが、そもそもITCは乳癌取り扱い規約では転移リンパ節としてはカウントされないようなものですし、転移する能力を持たないDCIS細胞のわずかな集団がたまたまリンパ節に流れ着いたとしても、それらが生着して増殖していくことはないと考えます。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治