3年前に乳がんの手術をしましたが、創部の痛みが強いです。対処法があれば教えてください。
2019年12月16日 術後疼痛
2017年に両側全摘をしています。リンパ、骨、肺に転移があります。術後の痛みの後遺症について伺います(周りには同じ痛みを持つ方
術後に痛みが残っていらっしゃるとのこと、日常生活もさぞかし大変な思いをなさっていることと思います。術後長期にわたって残る痛みは、「遷延性術後痛」と呼ばれています。「遷延性術後痛」は数年前からかなり注目されており、2018年には世界的な病気の名前を定める会議で、「遷延性術後痛」自体が病気として登録されました。乳がんの手術後は特に痛みが残りやすいことが知られていて、20年以上前から「乳房切除後疼痛症候群」という名前がつけられていました。ただこの「乳房切除後疼痛症候群」は手術でやむを得ず傷つけた神経による痛みだと考えられていました。最近では、神経痛だけではないことがわかってきて、他の手術と同じように「遷延性術後痛」の呼び名が用いられています。大変心苦しいことに、痛みの治療に関して現時点では確実な方法はありません。痛みの専門外来では痛みの質を評価して、少しでも軽減するような方法を考えていきます。神経の痛みが主だと判断すると、神経の異常な電気を抑える薬などを処方します。質問者様が処方されているリリカもその一つです。一方質問者様が困っていらっしゃる脇や腕に締め付けるような痛み・胸にずきんとくる痛みなどでは、一般的な消炎鎮痛薬で抑えられない場合は医療用麻薬やそれに準じた薬も考慮します。漢方や、筋肉の緊張を和らげるような薬を使うこともあります。また最近では、腋や胸に分布する神経に直接神経ブロックを試みたという報告があります。しかしまだ遷延性術後痛になった後で神経ブロックの効果があるかどうかは明らかになっておりませんので、試験的におこなう痛みの外来は限られています。痛みだけでなく両腕がむくんだりひきつったりする場合は、両腕の装具やリハビリ受診を提案します。確実な答えがなくて恐縮ですが、乳腺外科の主治医に相談なさった上で、痛みの専門医(ペインクリニック外来、麻酔科外来など)の受診を考えてみてください。少しでも和らぐことを祈っております。
文責:広島大学病院麻酔科 田口志麻