腋窩リンパ節に1個の再発がありました。術後、放射線治療はどうしたらいいでしょうか・
2021年5月24日 放射線治療
トリプルネガティブ乳がんでNAC施行、右乳房切除手
部位:右C / 組織型:indeterminable / 浸潤径:ypT0
リンパ節:sentinel 0/2,ypN0 / 脈管侵襲:Ly0,V0 / 治療効果判定:Grade3
C領域の乳腺組織に軽度の線維化を認める。その中に泡沫細胞がば
1年後の検診(今年3月)のエコーで切除した右側の胸に転移が見
4/22にその腫瘍と腋窩リンパ節郭清を行い、その病理所見は「
そして今後の治療ですが、転移が見つかった当初は術後放射線治療
今のコロナ禍の状況で5週間病院に通院すること、放射線治療を受
コロナのワクチンがいつ接種できるのか全くわからないのですが、
長々と失礼いたしました。何卒アドバイスのほどよろしくお願いい
ご質問ありがとうございます。
腋窩リンパ節ではなかったのではないかということですが、実際の状況がわからないため、今回は乳癌術後の腋窩リンパ節再発として回答させていただきます。
乳がん診療ガイドラインでは、領域リンパ節単独再発については、以下の様に記載されています。
“領域リンパ節の単独再発に関しては,十分な科学的根拠に基づいた治療法は確立されていない。腋窩リンパ節単独再発は,摘出が可能であればリンパ節切除術を行い,放射線照射の既往がなければ術後照射も考慮する。”
したがって、今回、術後に追加で放射線治療を行う方が良いのかについて、明確な見解がないというのが現状です。
術前化学療法で完全奏功であったものの初回治療後1年で再発しており、放射線治療の既往がないことから、今回、術後放射線治療を行うことは十分選択肢となりうると考えます。しかしながら、主治医の先生がおっしゃるようにリンパ節転移が1個であり、完全切除ができているのであれば、放射線治療を行わないことももちろん選択肢となるかと思います。この点については、どの程度の腋窩郭清が行われたかにもよりますので、主治医の先生にご確認ください。今回、放射線治療を行う目的は再発リスクの低減になりますが、放射線治療により再発リスクをどの程度減らすことができるかについては現時点では明らかではありません。したがって、最終的には、放射線治療のメリットデメリットを踏まえてご自身で選択していただく必要があるかと思いますが、主治医の先生と十分に相談し、納得した上で選択していただくことが大切と考えます。
ただし、術後放射線治療を選択される場合には、手術から放射線治療開始までの期間が長くなると再発リスクが増える可能性もありますので、ワクチン接種の時期が決まっていない現状では、ワクチン接種を待たずに治療を開始された方が良いのではないかと思います。乳癌の術後照射によって、新型コロナウイルス重症化の原因になるほどの免疫力低下を来すとは考えにくく、日本放射線腫瘍学会からも「早期乳がん手術後に行われる放射線治療は、体への侵襲が少なく、免疫機能の低下はほとんどありません。」という声明がだされております。日本放射線腫瘍学会のホームページに詳細が記載されておりますので、そちらも合わせてご確認いただければと思います。
文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの