術前化学療法後の手術・放射線治療について教えてください

2020年11月9日  , 

右乳房浸潤癌(ホルモン陰性・HER2陽性)と診断され、MRI、エコー、PET検査を行なった結果、乳房に腫瘍4つ、そのうち3つがくっついて、3.7mmになっている。他微小なものが多数。生検では脇リンパ陰性でしたが、PETでは脇と内胸骨リンパに1つずつ腫れがあり転移している模様。
術前化学療法として、EC療法4回、ドセタキセル+トラスツズマブ4回を行ないました。
治療後の検査では、抗がん剤の効果があり、腫瘍は小さくなっている(つぶれている)、脇と胸のリンパはなくなっているとの事でした。
近々手術ですが、自家組織での同時再建予定です。
それで、今後の手術・放射線治療についてご質問させてください。
医師からは、右乳房全摘+脇リンパ郭清→トラスツズマブ残り分→放射線治療と言われています。
①術前時点で、脇リンパ1つでも郭清しないといけないのか?
②胸は手術では取れないと言われたが、できないのか?
③放射線治療は必要なのか?

①術前時点で、脇リンパ1つでも郭清しないといけないのか?

現在の標準的な治療としては、術前化学療法前にリンパ節転移があった場合は、治療によって画像上、消失してもリンパ節郭清は勧められています

②胸は手術では取れないと言われたが、できないのか?

内胸骨リンパ節転移のことだろうと思いますが、治療によって消失したのであれば、その部分に放射線照射で済ませることが多いと思います。そこのリンパ節を取るためには、胸壁を一部切除する必要があるので侵襲も大きいからです。

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行

③放射線治療は必要なのか?

現在のガイドラインでは、術前化学療法が奏功した場合でも、化学療法前の病期に従って術後放射線治療の適応を判断することが推奨されております。今回は腋窩と内胸リンパ節に転移があるとのことですので、現状のガイドラインでは術後放射線療法を行うことが推奨される状態と考えます。

術後照射の省略は再発リスクを高めることにもつながりますので、主治医の先生ともよくご相談ください。また、放射線治療についての詳細を聞きたいとのご希望があるようでしたら、放射線治療科を受診していただき放射線治療医から直接説明を聞かれるのも良いのではないかと考えます。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの