術後16年経過したのに、まだ定期受診が必要でしょうか?

2020年10月23日   

私は33歳の時に非浸潤性乳がんになり、手術を受けました。胸は温存はしています。それからずっと定期検査を受けています。10年間は3ヶ月に一度の定期検診。10年経過したときに医師から、”あなたの場合は、若年性乳がんなので治ったとはいえない。今後も定期的に4ヶ月ごとに診ていきます”と言われました。
もう16年も経過しているのに、4ヶ月に一度の定期検診は、頻度が多いのではないかと思っております。

若年で乳がんをした場合は、10年経過使用が定期検査の頻度は多いものなのでしょうか?一般的なことでかまいませんので教えてください。今のところ、最初の兆候、あらたながんはないままきております。

お忙しいところ恐れ入りますがよろしくお願いします。

術後16年経過されているとのこと、再発なくお元気で過ごされているようで、非常に丁寧にフォローアップしていただいているようですね。質問内容について一緒に考えてみましょう。

まず、16年前の乳がんは、非浸潤がんであったとのこと、非常に早期発見ですね。この非浸潤がんは病期では0期になります。非浸潤がんとは、乳がんが最初にできる乳管や小葉内にとどまっており、その外には出ていない乳がんのことです。乳管や小葉から出ていなければ、血管やリンパ管に乳がん細胞が入っていくことはないので、転移はまずありません(微小転移も)。全身への転移の検査は基本不要です。16年前の乳がん(非浸潤がん)は完治していると言って良いでしょう。

但し、新しくできる乳がん(たとえば対側乳がんや、温存乳房内にできる乳がん)は、今まで乳がんになっていない人より発症率は高いです。この乳がんも早期発見しなければ、その乳がんで生命を失うこともあります。今年発表されたデータ(JAMA Network Open. 2020;3(9))でも、非浸潤がんになった乳がん患者さん14万人と、乳がんになったことのある患者さん14万人の10年後の生存率を比較すると、非浸潤がんになってその後新しく浸潤性の乳がんを発症し、それにより生命を失った人は、乳がんになったことのない人に比べて3.36倍多いという報告がありました。

一方、33歳という若年で乳がんになられていますので、BRCAという遺伝子に変異がある、遺伝性乳がんの可能性もあります。この遺伝子変異がある人は、乳がんの発症率が高いので、半年に一度は専門医の診察、年一度のマンモグラフィ検査や場合によってはMRI検査を受けることを奨められています。

担当の先生は、上記のような事や可能性も考慮され、丁寧に診察されているのではないでしょうか?

遺伝子検査は、今年(2020年)の春から保険適応となって、採血で調べられますので、担当の先生にも伺ってみてください。

いずれにしても、通常は、最低でも1年に一度は定期検診または定期フォローアップが必要です。遺伝性であれば、半年毎が良いですし、現在の乳腺にフォローアップが必要な所見があれば、そのフォローアップ期間は、所見により異なりますので、担当の先生の伺ってみてください。

 

文責:香川乳腺クリニック 香川直樹