遠隔転移後の抗がん剤治療について教えてください

2020年12月10日  , 

こんにちは。宜しくお願いします。40歳で人間ドックでステージ0の乳癌がみつかり(11㎝×12cm)、受診した大学病院の医師より、温存術で大丈夫といわれ、全摘希望しましたが、温存術を受け断端陽性あり放射線治療30回とホルモン療法を1年施行しました。その後不本意にも3年前に多発骨転移(20箇所)多発リンパ節転移が見つかり、ホルモン剤、イブランスで治療してきましたが、今年4月に肝転移(肝臓の2/3に転移)、CA15-3が500から2ヶ月で2000近くまで上昇、CEAは15まで上昇しました。
5月から初めての抗がん剤治療を開始、ドセタキセルを3週間おきに行っていましたが、好中球減少にともなうジーラスタ注射の副作用(高熱が7日持続と関節痛)が強く、3週間から4週間に伸ばしましたが、110迄下がったCA15-3が少しずつ上がり始め、先月160だったのが今月は188まで上昇しました。CEAはここ3ヶ月は5.6〜5.0を行ったり来たりしています。 先月末造影CTを撮りましたが、肝転移は改善していましたが、胸水がほんのごく僅か貯まっていると言われました。
9回もドセタキセルをしているので、そろそろ耐性が出来てきたのでしょうか? 腫瘍マーカーの上昇と胸水貯留が気になります。
一番効果のある薬剤は、アバスチン、パクリタキセルと聞きますが、私はお酒がダメで、ほんの少し服用しただけでも頻脈になってしまい、パクリタキセルは使用できません。そうなるとアバスチンは使用する事はできないのでしょうか?
他にはどんな抗がん剤が期待できますか?
2/3まで肝転移していると、今後はやはり厳しいととらえるしかないのでしょうか? 強い副作用の出る抗がん剤は希望はしておりません。
お忙しい中とは思いますが、宜しくお願い致します。

多くの質問がありますので、ポイントを分けて回答いたします。

・乳がんサブタイプについて

ホルモン剤、イブランスで治療されたということは、「ホルモン受容体陽性HER2陰性」ということでしょうか?それはいつ確認されたでしょうか?手術時はステージ0(非浸潤がん)とのことですので、手術の際の検査であれば、現在の状況と異なる可能性があります。とくにHER2は浸潤がん部位で判定することになっています。肝臓など、内臓の転移部位から組織を採取することはリスクを伴いますが、可能であれば相談してみて良いでしょう。

・腫瘍マーカー上昇と胸水について

腫瘍マーカーが継続して増加しているようでしたら、ドセタキセルの効果が乏しくなってきている可能性があります。わずかな胸水であれば、乳がんが原因とは言い切れません。いずれにしても、腫瘍マーカーのみでなく、CTなどの画像検査で、本当に病気が悪化していないかどうかを確認することが大切です。

・パクリタキセルが使用できない場合、アバスチンは使用できないのか

できません。

・他にはどんな抗がん剤が期待できるか

抗がん剤はドセタキセル(タキサン系)のみを使用したという状況でしょうか。他の薬剤としては、アントラサイクリン系薬剤、エリブリン、カペシタビン、TS-1、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカンなどがありますが、サブタイプや特殊検査の結果によって、さらに候補薬が出てくる可能性があります。

・今後は厳しい?強い副作用の出る抗がん剤は希望しない

何をもって「厳しい」、「副作用が強い」と捉えるかは、いろいろな感じ方がありますので、一概には言えません。遠隔転移のある状況ですので、治癒が難しい状況であることに間違いはありませんが、治療法は複数あります。薬によって副作用も違いますので、今後の治療は主治医の先生とよく相談されてください。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 笹田伸介