術前化学療法をしたら、HER2陰性から陽性に変わりました。このようなケースは珍しいのでしょうか?

2020年12月17日   

ER90% PgR40% HER2 2+ グレード3 FISHでシグナル比1.9増幅なしでHER2陰性となりました。術前にFEC4クール、アブラキサン4クール。効果は1a軽度でした。手術は温存、腋窩リンパ節郭清し、30回の放射線をしました。病理検査でHER2 シグナル2.6増幅ありで陽性に変わりました。今後ドセタキセル+ハーセプチン+パージェタ4クール(2クールでも良いのではと言われた)。その後ハーセプチン+パージェタ14〜16回予定です。
担当医から今までこの様なケースはなかったと言われました。
陰性から陽性に変わるこう言うケースは珍しいのでしょうか?
今後の治療は適切ですか?

ご質問ありがとうございます。

まず、HER2の陽転化についてです。術前化学療法を受けた日本人の乳癌患者さんの手術前後のホルモン受容体とHER2発現をみたデータがあります。術前にHER2陰性であった9,947人の患者さんのうち、340人(3.4%)でHER2の発現が陽性に変化していました。陽転化するケースはまれですがあります。術前治療の影響かもしれませんが、術前の針生検は腫瘍全体の一部しか評価できないため、たまたまHER2の発現が弱いところが生検でとれた可能性があります。

次に治療についてです。腫瘍径やリンパ節転移の状況がわかりませんが、主治医の先生からパージェタの併用を勧められているということは、腋窩リンパ節転移が陽性であったか大きさが2cm以上などの状況であったかと思います。HER2陽性乳がんは、術前術後に抗HER2薬を使用することで予後の改善がみられるため、今回、手術でHER2の発現が判明したことはむしろ良かったことと思います。ハーセプチン、パージェタの副作用はこれまでの抗がん剤と違って少ないので、あともう少し頑張ってください。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子