HER2陽性乳がん、術前化学療法症例です。手術をしましたが、がんが残存していました。治療法は何が勧められますか?

2022年3月7日   

Stage2aのHER2+++腫瘤4cmの乳癌と診断され、術前にAC療法4回、HER2療法+DTX4回を行い、術前化学療法でMRI画像上腫瘍が消失、エコーで石灰化が見られる病変を切除しました。病理の結果、組織学的治療効果Grade2b、細胞的に浸潤癌の残存が複数個所認められました。

病理の結果が出る前に、術後治療として、1,ハーセプチン 2,ハーセプチン+パージェタ 3,カドサイラ が提案されました。

病理の結果が出た後は、1か2を勧められ、1で良いだろうと言われたのですが、1と2を比べて再発予防効果が高い2を選択、現在治療を受けています。

途中で主治医が変わり、3、カドサイラを適用すべきだと言われました。何を根拠に途中から変更するのか、前医の判断はハーセプチンのみでしたので、カドサイラは副作用が強く高額医療になるため、病院の利益目的で変更を提案したのではと不信感も沸き、苦しい副作用は避けたいので、提案通りに変更したほうがいいのか悩んでいます。

(1)HER2陽性浸潤癌の場合、術後の治療として、1,ハーセプチン 2,ハーセプチン+パージェタ 3,カドサイラ はどのように使い分けされていますか?

(2)腫瘍が術前化学療法で消えても、手術や手術後の治療は「癌と診断されたときの腫瘍のサイズ」で判断されるものなのでしょうか。

HER2陽性乳癌は、術前化学療法を行うと4〜7割の方で完全に乳がんが消失します。これを病理学的完全奏効(pCR)と言います。pCRが得られた症例では非常に予後が良いことが知られていますので、術後はハーセプチンのみで良いと考えられています。一方、pCRが得られなかった症例では、抗HER2療法をカドサイラに変更して行います。術前化学療法ではなく、術後に化学療法を行う場合には、効果が分かりませんのでハーセプチン+パージェタを選択するようになります。以上からわかるように、効果によって使い分けますので、「癌と診断された時の腫瘍のサイズ」ではありません

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行