乳癌術後療法として内分泌療法にS-1を併用することは可能ですか?

2022年8月1日   

67歳女性。昨年4月19日左乳癌の全摘をしました。病理の結果は、大きさ1.6*1.2cm、ER 90%, PgR 40%, Her2 (+1) 陰性、Grade III 、Ki67 30%以上、センチネルリンパ陰性、リンパ、脈管浸潤なしでした。オンコタイプを提出し、RS=19 で、化学療法の上乗せ効果はほとんどないとの事で、迷いましたが、現在は内分泌療法(フェマーラ内服)のみで経過を見ております。

 「POTENT試験の結果、再発リスクの高い場合内分泌療法にS-1を1年間併用することを強く勧める」という結果が出ています。2月14日大鵬薬品は、適応追加申請をしているようです。しかし、5月末時点では、S-1は早期乳癌に対しては保険適応外のようです。

 最新の状況は判りませんが、まだ保険適応外なのでしょうか? もし保険適応されたとすれば、私のように術後1年以上経過している患者は適応外なのでしょうか?

 大規模試験は、術後すぐに行われているでしょうから、術後時間が経過している患者さんは想定していないでしょうね。 組織学的グレードは3なので、適格基準ではありますが。

  お忙しいところ大変申し訳ありません。

POTENT試験はご存じの通り、現時点では保険適応外の治療であるため、治療を受けられるかどうかに関しては、担当医の先生によく相談する必要があります。

相談者様の場合、腫瘍径2cm未満、組織学的グレード3という時点でPOTENT試験の適格基準をクリアしています1)。しかし、POTENT試験の組み入れ基準2)である、手術から1年以内、内分泌療法開始から6カ月以内という規定に入っていないため、そもそも治療の適応にはしづらいと考えられます。また、内分泌療法にCDK4/6阻害剤の一つであるベージニオを併用する治療法の適格基準も満たしていないので、Oncotype DXのRSが高値でないのならば、内分泌療法単独での治療(治療期間は5~10年間)を受けられることを推奨します。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治

参考文献

1)乳癌診療ガイドライン①治療編2022年版 CQ5ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後療法として、内分泌療法にS-1を併用することは勧められるか?

2)Lancet Oncol. 2021 Jan;22(1):74-84. Supplementary appendix 2 p5