トリプルネガティブ乳がんに対する化学療法についていろいろ聞きますが、何が最も良いのでしょうか?
2020年2月28日 化学療法
トリプルネガティブ乳がんと診断されました。腫瘍2.
治療を受ける病院によってみなさんの治療方法(抗がん剤)がちがう
ご質問ありがとうございます。ステージIIAのトリプルネガティブタイプの場合、術前・術後化学療法は、アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤を引き続き行うことです。順番が逆でも構いません。質問者様が受けておられる“前半アブラキサン+エンドキサンを3週間毎に1回4クール、後半はFEC療法”は、前半がタキサン系((アブラキサン)、併用しているエンドキサンはタキサン系の効果を増強する)、後半がアンスラサイクリン系(FEC)になります。質問者様は色々と勉強され、他の病院と異なる治療法ではないか、と不安になられたようですね。アブラキサンはパクリタキセルを蛋白(アルブミン)でくるんだ薬剤でパクリタキセルよりも治療効果が高いことが示されています。確かに現在受けられている治療は、過去の臨床試験でトリプルネガティブ乳がんに対し高い完全奏効(顕微鏡で見て腫瘍が消失)を示しましたが、試験に参加した患者さんの人数は数十人規模で標準的とは言えません。現時点で一番エビデンス(信頼性の高い臨床試験による裏付け)があるのは、ドーズデンスといって、白血球を増やすG-CSFを使用しながら2週毎にアンスラサイクリン系(ACあるいはFEC(EC))、タキサン系(パクリタキセル)を4コースずつ行う治療、あるいはアンスラサイクリン系、タキサン系(パクリタキセルあるいはドセタキセル)を3週毎に4コースずつ行う方法です。年齢や合併症、臓器機能、腫瘍の状態(ホルモン受容体やリンパ節転移の有無)などを考慮して選択します。質問者様が受けている治療とドーズデンス治療のどちらが優れているかは、比較試験がないので不明です。ご自分の治療について主治医の先生とお話され、納得して治療を受けて頂くようにお勧めします。
文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子