エクオールはホルモン療法の副作用には有効でしょうか?それとも服用しない方がいいでしょうか?

2020年3月10日  , 

先日は、「アナストロゾールの副作用について」の質問で、「肩の痛みや可動域の制限は、エクオールで症状を緩和できる可能性がある」というアドバイスをいただきありがとうございました。リハビリを受けている整形外科で、エクオール(エクエル)を扱っていたので、こちらでアドバイスいただいたので服用したいと先生に伝えたところ、「エクオールは女性ホルモンと同じような働きがあるので、乳癌でホルモン治療中の人にはお勧めてして良いかわからない。治療中の乳腺外科の先生に相談してほしい。」とのことでした。乳腺外科の次の診察はまだかなり先ですし、エクオールは扱っていないようですので、こちらでご相談させていただきたいと思います。体に害があるのであれば、服用はせずに、我慢しようと考えますが、害がないのであれば、関節のこわばりや肩の痛みや動かしにくさからくる生活しにくさを少しでも改善したいと藁にもすがる思いでいます。再度の質問ですみませんよろしくお願いいたします。
①エクエルはエストロゲンと同じなのでしょうか? ②服用しないほいうがいいのでしょうか? ③ドラッグストアでいろいろなエクオールが売られていますが、それらはいかがしょうか? ④選ぶ際のポイントなどあればお教えください。

  • エクオールは大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されることにより、産生される成分です。女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造をしているため、似た作用を持ちますが、エストロゲンとは異なるものです。また、女性ホルモンの量を増やすものでもありません。
  • エクオールもエストロゲンもエストロゲン受容体に結合するのですが、エストロゲンが不足する臓器ではエストロゲンの代わりにエクオールが結合することで更年期症状を緩和することが期待されます。逆に、乳がん組織のエストロゲン受容体にはエストロゲンより先にエクオールが結合することで乳がんの増殖を抑制すると考えられています。

また、乳がん診療ガイドラインには「大豆食品、大豆食品に含まれるイソフラボンの摂取が乳がん発症リスクを減少させる可能性がある」との記載もあります。

私自身は内分泌療法中の副作用緩和にお勧めしており、効果がみられる患者さんもいらっしゃいます。もちろん、違う考えの先生もいらっしゃるとは思いますので、主治医の先生とも相談されたほうが良いと思います。

  • エクオールは処方薬ではありませんので、ご自身で調剤薬局やドラッグストアで購入いただくことになります。
  • 多くの会社からエクオールは販売されています。どの会社の製品の効果が高く安全性が高いのかは比較試験があるわけではないのでわかりませんし、どれをお勧めというのは正直難しいです。大塚製薬のエクエル®がインターネットでは検索の上位にあがってきますが、安全性や効果について研究結果が多く報告されておりますので信頼できるサプリメントの1つだと思います。

文責:ひろしま駅前乳腺クリニック 長野晃子

 

追加です。

「乳癌診療ガイドライン 治療編 2018年」には「内分泌療法によるホットフラッシュに対して、ホルモン補充療法は行うべきではない」と記載されていますし、乳がん治療の面からもホルモン補充療法は禁忌です。
保険診療となることなども含め、日本の実地臨床での使用の可能性を考えると、大豆イソフラボンと漢方薬が中心となります。漢方薬では、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸が挙げらます。大豆イソフラボンでは、大豆食品に含まれる大豆イソフラボンの成分が腸内細菌によって代謝された「エクオール」があります。閉経後でホットフラッシュが1日1回以上ある女性160人を対象に、エクオールとプラセボを比較した日本のランダム化比較試験では、エクオールの摂取期間中はホットフラッシュの回数が有意に抑えられ、首や肩のこりも軽減したことが報告されています(J Womens Health 2012;21:92-100)。

また、イソフラボンはエストロゲンと類似の作用があるとされていますが、日本人の閉経後の女性を対象としたパイロット試験では、エクオールを摂取しても、血中のエストラジオール(エストロゲンの一種)や卵胞刺激ホルモン(FSH)の濃度に大きな変化はみられず、乳がんの予後に影響しない可能性が示されています(Menopause 2011;18:563-74)。

「乳癌診療ガイドライン 疫学・診断編 2018年版」には、「大豆食品、大豆食品に含まれるイソフラボンの摂取が乳癌発症リスクを減少させる可能性がある」とする記載もありますが、イソフラボンにはエストロゲン作用があり、推奨される摂取量の上限が定められていることに留意する必要があります。摂取する際には、きちんと決められた量を摂取するようにしてください。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行