トリプルネガティブ乳がんです。術前化学療法を行いましたが効果がありませんでした。術後に勧められる治療を教えてください

2020年7月28日  , 

昨年の9月トリプルネガティブStageⅡA リンパ転移 なしと診断され、10月より抗がん剤治療、今年 5月9日左乳房全摘、センチネル節生検の手術を受けました。術後の病状説明で、抗がん剤は効かず、腫瘍は5㎝、リンパ節転移 なし 悪性度 Grade 3 ER陰性 HER2陰性 Ki67 40% StageIIIと説明がありました。
推奨される術後治療は、抗がん剤のゼローダを勧められましたが、治療として確立されていない事や辛かった抗がん剤治療での効果が見られなかった、QOLの低下への抵抗もあり現在は月1回の受診で治療はしていません。ゼローダの服用治療を受けるべきだったのでしょうか?今からでもできるのでしょうか?効果あるのでしょうか?悩んでいます。
宜しくお願い致します。

術前化学療法後に病変が残存している場合、HER2陰性では、CREATE-X試験という臨床試験で、術後、標準治療にカペシタビン(商品名:ゼローダ)6-8コースを併用する方が、標準治療のみよりも、予後が改善する可能性があることが報告されています(NEJM 2017)。

具体的には、5年無病生存率が、標準治療群 67.6%に対し、ゼローダ群 74.1%で、5年全生存率が標準治療群 83.6%に対し、ゼローダ群 89.2%でした。さらにトリプルネガティブ症例に限れば、5年無病生存率が、標準治療群 56.1%に対し、ゼローダ群 69.8%で、5年全生存率が、標準治療群 70.3%に対し、ゼローダ群 78.8%でした。

現在はまだゼローダを上乗せ投与することが標準治療になってはいませんが、今後標準治療となる可能性があります。特にトリプルネガティブ症例であれば、より予後を改善しようとする目的で、この試験の結果を元に術後治療として先取りして行うのも良いと思います。

ただし、ゼローダには、手足症候群(手足の皮膚障害、ひどいものGrade 3以上 11.1%)、下痢(ひどいもの Grade 3以上 2.9%)という特有の有害事象があり、他にも骨髄抑制等もありますので、有害事象対策は必要です。

また、腫瘍が5cmあったとのことですので、乳房全摘術をされてはいますが、胸壁再発の防止目的に、胸壁への放射線照射も治療に入ってくるとは思います。

現在、術後2-3か月くらいの時期ですので、これらの術後治療を開始することはまだ遅すぎるということはなく、可能と思います。もう一度主治医の先生と相談をされてはいかがでしょうか。

 

文責:尾道総合病院乳腺外科 吉山知幸