トリプルネガティブ乳がんと診断されました。手術、化学療法の順番や手術までの待ち時間が心配です

2020年2月19日   

1月に生検を受け、2月にトリプルネガティブ浸潤型乳がんとの診断を受けました。大きさは1.5センチ程度でステージ1温存可能とのことですが、グレードは3、ki67は60%超と悪性度と増殖率が高い性質のがんと伺いました。手術は3月でその後抗がん剤治療。抗がん剤治療がいつから始まるかは聞けていません。
通常手術までは期間があると聞きますが、このような悪性度も増殖率も高いガンで、また乳房の痛みも日々増していることから、来月下旬まで何もせずにいてよいのかと怖くなっています。
一昨年2018年11月にマンモグラフィーとエコーを受けた時点では何も指摘されませんでしたので、それだけ増殖率の高いガンであるかと思うと非常に不安です。また、手術→抗がん剤治療、若しくは抗がん剤治療→手術の順番については、担当の先生はどちらでもいいようなニュアンスでお話されていましたが、どのような違いがありますでしょうか。
トリプルネガティブの場合、手術後1カ月以内に抗がん剤治療を開始しないと生存率に関わると言う記事を読みましたが、もし1カ月を越えてからの抗がん剤治療を提案された場合は、担当の先生に1カ月以内でお願いしたいと伝えるべきでしょうか。

担当医の先生もおっしゃる通り、術前化学療法を行った場合と術後化学療法を行った場合について予後に差はないとされております。術前化学療法を選択する際には温存手術を目的にする場合やStageがやや進行している場合などがあります。質問者さんのお話から腫瘍径は1.5cmのStageIトリプルネガティブ乳がんですので進行度もなく術前化学療法をなさならくても温存手術は可能な状況と考えます。その状況での術前化学療法のメリットとしては

・抗がん剤の腫瘍効果が目に見えること。

術前化学療法による病理学的完全奏効が得られれば良好な予後が期待できるとされていること。

また術前化学療法により病理学的完全奏効が得られなかった場合でも、術後に半年間ゼローダという抗がん剤を内服することでトリプルネガティブ乳癌において再発リスクを48%、死亡リスクを42%下げるとされています(CREATE-X試験)。
術後化学療法のメリットとしては
手術病理検査結果によって抗がん剤治療が短縮できる可能性があること。が考えられます。
また術後化学療法開始時期につきましては
2015年米国の報告論文では術後1か月での抗がん剤開始と30日~90日での抗がん剤開始には差がなかったが、90日以降の開始は死亡率が増加したとなっております。術後の状態もありますので、1か月以内に開始しなければいけないことはありません。
 術前化学療法、術後化学療法どちらにもメリット、デメリットがあります。
抗がん剤治療は副作用を必ず伴いますので担当医先生としっかり御相談なさって納得して治療を始められた方がよいと思います。
文責:広島大学病院乳腺外科 板垣友子