ホルモン感受性の低い乳がんに対する術後治療を教えてください

2020年11月9日   

妊娠中から右の乳頭から血性の分泌があり、乳がんが発覚、出産後、非浸潤性乳がんの疑いとのことで全摘出しました。
術後の検査の結果、リンパ節への転移はなし、80×67mmにわたる非浸潤がんの中に、最大6ミリの浸潤がんが複数個見つかりました。エストロゲン受容体1〜10%陽性 プロゲステロン受容体 陰性 HER2 陰性 Ki-67 20%
で、ホルモン療法適応、それに加えて抗がん剤治療も提案されましたが、抗がん剤治療については家族で話し合って決めてくださいとのことで、すごく迷っています。来週返事をしなければならないのですがアドバイスを頂けると幸いです。

出産直後、小さなお子様もおられ、悩ましいですね。術後の再発予防治療について考えていきましょう。

乳がんの範囲はひろかったものの、浸潤径6㎜、リンパ節転移なしのT1bN0M0:Stage1の早期乳がんですね。HER2陰性、ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体1〜10%陽性,プロゲステロン受容体 陰性)、Ki67 20%の、ルミナールBタイプです(エストロゲン受容体の陽性率は低く、プロゲステロン受容体は陰性ですので、トリプルネガティブに近いタイプです)。タイプで分けると、浸潤径6㎜のルミナールBタイプは、ホルモン療法だけをおすすめです。もしトリプルネガティブと考えると、6㎜~10㎜は化学療法も選択肢として考える状態です。

Predictという再発予測ツールで考えると、ルミナールタイプなら、手術だけでは、10年生存率は87%、ホルモン療法5年で3.4%再発予防でき、91%に、抗がん剤治療すると2.7%再発が減り、93%になります。もし、トリプルネガティブだとしても、手術だけでは10年生存率は86%、抗がん剤治療すると、90%になります。浸潤径は6㎜と非常に早期ですので、額面通りだと、ホルモン療法だけでよい感じですが、気になるのは、34歳とお若いことと、ホルモン感受性が低いこと、浸潤径6㎜ながら、がんの範囲は広く、浸潤部分が多発していることです。

個人的には、引っかかる点が多い時には、より濃厚な治療を考慮したほうが良いと考えます(抗がん剤治療を考えたほうが良いと考えます)。おそらく、主治医の先生も同じようなことを考え、抗がん剤の選択肢をご呈示されたのだと思います。もし、悩まれた際には、オンコタイプDxという診断法(再発予測ツールで、抗がん剤治療を選択したほうがよいかどうかを、摘出したしこりを遺伝子解析して調べる方法)もあります(費用は40万かかりますが)ので、主治医の先生にご相談してください。

 

文責:香川乳腺クリニック 香川直樹