ホルモン療法を10年した後でも再発のリスクは多少あるのでしょうか?
2020年8月6日 ホルモン療法
ニュースで乳がんの特集を見て、
乳がんの診断がついたら、治療が始まります。画像に写っているがんを手術で取り除き、画像に写っていないがん(微小転移のこと)はおひとりおひとりの患者さんにとって適切な追加治療(放射線療法、薬物療法)でやっつけます。しかし、微小転移のうち増殖の速い、あるいは治療効果の乏しいグループが術後早期に再発してしまいます。再発のピークは術後1~3年の術後早期にあり、その後、徐々に再発は減っていきますが、術後5年たっても10年たっても再発がなくなることはありません。
薬物療法で死に絶えていくがん細胞がいる中で、近年の研究では、治療による攻撃から身を守るため休眠状態に入るがん細胞もいることがわかってきています。治療が終わり「嵐が過ぎ去った」のち、休眠していたがん細胞の中に、休眠から目覚め活動を再開するものが現れ、それらが晩期再発を起こすと考えられています。
化学療法は切れ味鋭くがんをやっつけ、ホルモン療法はじっくりとがんの増殖を防いでくれます。これまで臨床試験の結果をふまえて、治療のメリット・デメリットを検証しながら、ホルモン療法の治療期間は2年→5年→10年と長くなってきました。「再発リスクはゼロでなければならない」という考え方を持つと、不安な気持ちにとらわれがちになってします。「再発リスクはゼロではないということ」を受け止め、「リスクの程度がどのくらいか」を考え、「リスクを減らすために最適の治療を選択し頑張ってきた自分が今ここにいる」ということを再確認いただければと思います。あなたの周りには、何かの時に寄り添ってくれる仲間がたくさんいます。
文責:はつかいち乳腺クリニック 川渕義治