ルミナールAでリンパ転移ありの症例に化学療法の上乗せ効果はあるのでしょうか?
こんにちは。現在28歳です。手術の病理結果をもとに今後の治療方法についてご意見をお伺いし
浸潤性乳管癌 腫瘍径0.7cm 浸潤径0.7cm 組織学的グレード2 核グレード1
ER強陽性 PGR強陽性 HER2陰性 Ki67 10% ルミナールA
リンパ節転移1/2(マクロ転移) ステージ2A
上記のとおり確定診断されました。リンパ節郭清は行っておりません。
主治医としては、化学療法6か月、ホルモン療法5~10年をおす
①主治医のおっしゃる通り、上記の治療を受けるべきでしょうか。
②化学治療による上乗せ効果はどの程度と予想されますでしょうか
化学療法と妊孕性について悩まれるかと思います。
化学療法を行うことのメリットがあるかどうかを判定するツールが いくつかありますが、
PREDICT(https://breast. predict.nhs.uk/) というサイトでご自身の病理結果を当てはめて化学療法の上乗せ効 果について一般的に評価すると10年生存率は以下のようになりま す
治療法 | 上乗せで期待される効果 | 全生存率 % |
---|---|---|
手術のみ | – | 94% |
+ ホルモン療法(10年間) | 1.6% (0.9% – 1.9%) | 95% |
+ 化学療法 | 1.2% (0.9% – 1.5%) | 97% |
数字を見るとやはり化学療法を上乗せするメリットは少ないように 思われます。
ただ、 化学療法の恩恵を受けたと思われる方が2人おられるのも事実です 。
化学療法を行うべきかどうかはお金がかかりますが「 オンコタイプDx®」 といったがん細胞の遺伝子を解析して再発リスクを評価する方法が あります。このような検査で「低リスク」 とされた場合にはホルモン療法だけでもよいと判断できるかと思い ます。ただし、保険適応外のため40万円自費でかかります。
化学療法を行う場合には将来妊娠する能力を温存するための「 妊孕性温存」が可能です。
ご年齢的には化学療法後もいずれ生理が戻る方がまずほとんどです 。
化学療法をおこわなくてもホルモン療法を最大10年間行うと38 歳になられるため年齢による妊孕性の低下が予測されます。
化学療法を選択するしないに関わらず、 妊孕性温存は是非ご検討ください。
数字は大変に参考になりますが、 ご自身のお気持ちに最も沿う選択をご検討ください。
文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行