再発乳がんで治療中です。これまでの経過やこれからの治療方針について相談させてください
2021年1月25日 再発治療
56歳です。20年前に4ミリの早期乳がん発見、
その後、放射線治療やホルモン内服を今まで続けてきましたが、
今の通院は、毎月1回の血液検査と3~
転移が心配でPET検査や脳検査の事を主治医に相談しましたが、
乳がんになった人の脳・骨・他の臓器転移の話も聞きますので、
また、主治医の指示により検査・
①やはり早期発見で、長年ずっと治療・検査して来ても、
②主治医の言うように脳や骨転移の検査は必要ないのでしょうか?
主治医の今の治療方針で本当に大丈夫でしょうか?
③また、
一般的には患者に合う検査はせずに、
長くなりましたが、
ご質問ありがとうございます。
20年間治療をがんばってこられたのに、今回、肺とリンパ節に転移が出てきたということで、大変ショックを受けていらっしゃると推察します。経過では、これまで3度手術を受け、ホルモン療法を継続していたことから、既に乳房や腋窩リンパ節などへの再発(局所再発)がみられていた状況かと思います。“ステージ4”は、診断時に転移がある状況を指し、再発した場合には、ステージ○○という呼び方はせず、再発乳がんとしてステージ4と同じように全身治療(薬物治療)を考えていく必要があります。局所再発の場合は、再手術、放射線治療、術後補助療法(抗がん剤やホルモン療法など)により根治が目指せることもありますが、再々発の術後となると、目に見えないような病巣が体に潜んでいる可能性は高い状況です。そのため再発を抑えるためにホルモン療法を継続していたのだと思います。逆に、ホルモン療法を受けていなければ、もっと早い時期に遠隔転移が出てきていたと考えられます。
乳癌の転移は、おっしゃるように体のどこにでも起こる可能性があります。一方で、乳がんのタイプ(質問者様の乳がんは、ホルモン受容体陽性、ハーツー蛋白は陰性?)によって、転移しやすい場所に特徴があります。また、乳がんの広がり(肺転移の大きさや数など)や経過、症状によっても、ある程度予測することができます。おそらく、主治医の先生は、現時点で骨や脳転移の可能性は低い、と考えておられるのでしょう。一方で、ホルモン陽性乳がんは骨転移も生じやすいので、背部痛や動作に伴う足の痛みなどが出た場合には、主治医の先生に早めにご相談ください。骨転移に対しても、現在のベージニオ、フェマーラなどの薬物療法による全身治療となりますが、骨折のリスクがある場合には放射線治療が必要になります。
ゲノム検査の目的は、がんの特徴(遺伝子変化)を調べ、それを標的にした分子標的薬を使用することです。現在受けているホルモン剤(フェマーラ)、CDK4/6阻害薬(ベージニオ)は、ホルモン受容体陽性乳がんをターゲットにした分子標的薬で、まさに、がんの特徴にあった治療を受けておられる状況です。最近話題になっているがんゲノム検査は、推奨される薬物療法が終了あるいは終了見込みの場合に保険適応で検査が受けれますが、質問者様には有効性が期待できる薬剤がたくさんあるので、今、ゲノム検査を受ける必要はないでしょう。ほかにゲノム検査として、BRCA遺伝子変異を調べるものがあります。遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因となる遺伝子ですが、この遺伝子変化が陽性であれば、それを標的にした分子標的薬もありますので、検査について主治医の先生とご相談されると良いと思います。
文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子