化学療法中の転院はできますか?

2021年12月15日   

HER2陽性で、しこりは2.3センチ位で脇の転移は今のところなしです。ステージ2です。術前に治療で、ハーセプチンとドセ、その後ハーセプチンとECのみです。術後はハーセプチンのみです。最近抗がん剤治療のハーセプチンの1回目のみ終わりました。こちらのサイトや勉強しているうちにパージェタをしりました。

今日主治医の先生に聞いたのですが、もっと症状が進んでる人にパジェータを使うと言われました。でももう一度調べていたら生存率もあがるようですし、どうしても受けたいですのでもう一度相談しようと診察予約を入れました。
ですが混んでいてドセ1回目の次の日しか予約がとれませんでした

相談してパジェータが無理な場合は転院も考えています。ですが、その前にドセの1回目が始まります。化学療法中に転院できるものですか?このような場合はドセを受けずにセカンドオピニオンをした方がいいのでしょうか?
それとも受けてからでもセカンドオピニオンで転院できたりするのでしょうか?
受け入れてくれるかも不安です。

ご質問ありがとうございます。

HER2陽性乳がんと診断され、手術前の化学療法が始まったところですね。突然病気がわかって不安な気持ちで色々情報を集めておられる状況と思います。主治医の先生から提案された治療は、ハーセプチンとドセタキセルの併用療法後にEC療法を行って手術をし、術後に術前と合わせて1年間ハーセプチンのみを行う方法ですが、質問者様は、ハーセプチンにパージェタを併用した方が治療効果が高くなるのではないかと心配されているのですね。結論からお話しますと、私も主治医の先生と同じ意見です。質問者様が目にされた情報は、HER2陽性乳がんを対象としたAPHINITY試験と思いますが、この臨床試験ではHER2陽性乳がんの術後の患者さんを約2,400人ずつ、ハーセプチンと化学療法の標準治療に対し、標準治療にパージェタを加えることで再発をより抑えることができるかを比較検討しています。現在まで術後6年までの経過が報告されており、腋窩リンパ節転移がない患者さんでは、再発がみられなかった術後3年後の割合が、、ハーセプチンのみの場合が98.4%、パージェタを加えた場合が97.5%、術後6年後の割合がハーセプチンのみの場合94.9%、パージェタを加えた場合95.0%と、パージェタを加えることでの差はみられていません。そのため主治医の先生がおっしゃるように、腋窩リンパ節転移がない早期の方には、パージェタは加えていません。ただし、手術でとった乳房に生きたがん細胞があれば、ハーセプチンではなく、カドサイラというハーセプチンに抗がん剤をくっつけた薬剤が推奨されます。化学療法中の転院は可能と思いますが、最適な治療を受けておられるので、転院のストレスや治療が遅れる可能性を考えると、そのデメリットの方が大きいように思います。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子