手術側の腕での点滴や採血はしない方がいいのでしょうか?

2020年9月28日   

右側乳がんで乳房温存術を受けました。センチネルリンパ節生検により転移がなかった為、リンパ節郭清はしませんでした。9月から抗がん剤(TC療法3週間ごと4回)とハーセプチンの点滴を始め、初回は入院しました。その時、病棟看護師さんから右腕での点滴、採血、血圧測定などは出来ないと言われました。
術後検診の際、担当医からは特に気をつける必要はないと言われていたため驚きました。次回の抗がん剤治療は外来で診察の前に血液検査があり、担当医への確認が出来ません。
術後、右腕が上がりにくかったり変な筋が発生したりしましたが2か月が過ぎ現在は特に困ることもありません。浮腫も一切ありません。
もし右腕が使えないとなると採血と点滴は左腕のみということになります。血管が傷ついてしまうのではないかという不安があります
センチネルリンパ節生検のみでも術側の腕は使ってはいけないのでしょうか。

一昔前は、手術をした方の腕からは採血しないように言われていました。しかし、現在はいろんなデータが出てきたのでそれほど厳しく言われていません。まず乳がん診療ガイドラインには以下のように書かれています

「予防:術後リンパ浮腫に対する適切な予防指導(スキンケア),運動療法は発症率を減少させ,発症時の早期介入の機会を増やす。患者や家族が行う用手的セルフリンパドレナージによる上肢リンパ浮腫の予防効果を明確に示すデータはない。」

スキンケアや術後早期からのウエイトトレーニングによりリンパ浮腫が予防されるということです。他にも、採血、血圧測定、飛行機の搭乗などは、リンパ浮腫のリスクにならなかった、という報告もあります。現在の私の知識では、(1)肥満と感染はリンパ浮腫の二大因子である、(2)化学療法特にタキサンはリンパ浮腫のリスクを上げる、(3)腕を締め付けるようなことがなければ筋肉、関節を使うような運動はむしろ良いので過負荷にならないように行った方が良い、(4)採血、血圧測定などはOK、となっていると思います。

要は、太らないように気をつけ、腕に感染を起こさないようにスキンケアをすることくらいしか自分にできることはないかと思います。まあ、太らないことというのは非常に大変なことではありますけど。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行