皮膚潰瘍をともなう乳がんの皮膚ケアについて教えてください

2020年2月6日   

在宅で訪問看護師として働く看護師です。よろしくお願い致します。
訪問を開始したばかりの患者さんで、乳がんstageIV、現在31歳。4,5年前に自分でしこりを発見し受診、初期の乳がん(当時は1㎝程度だったようです)の診断を受けたようですが、なぜか(宗教的理由?)その後全く治療を受けなかったようです。ご両親やお姉様等ご親族も納得の上で治療を受けていません。
3年くらい前から乳頭周囲からがん組織が皮膚表面に出てきて、激痛と大出血を繰り返したとのこと。昨年、乳房全体を覆うようながん性皮膚潰瘍になりそこから大出血してショック状態になったため家族が救急搬送し、輸血を受け、同時に精密検査を受けて、両大腿骨、骨盤、背骨など全身の骨転移、肺転移、肝転移の診断を受けたようですが、その後も継続的な治療は受けなかったようです
遠隔転移のため日常生活全般に介助を要するようになったことから、訪問看護の依頼があり、訪問を開始しましたが、正直、現在の花咲き乳がんの状態の皮膚をどのように処置したら良いのかが分かりません。
独特の皮膚潰瘍臭があるし、特に刺激を与えなくても突然に大量出血し、タオルやガーゼで30分近く圧迫止血することもあります。
今回、骨転移の痛みに対して、ホルモン剤とイブランスが処方されたので、これが皮膚潰瘍にも奏功すれば良いのですが処方して下さった先生も「期待していません」とのこと。
患者さんやご家族は経済的にも恵まれており十分な判断能力があるにも関わらず、こんな状態になっても治療を受けない、その患者心理も分かりかねています。
患者さんは、発症から現在まで、色彩療法、ヨード療法、テラヘルツ治療、ゲルソン療法(無塩・無糖・野菜のみの食事療法?)など数々の民間療法を日本全国で受けており、どの民間療法も医師がされていたらしいのであまり悪くはいえないのですが、それらはそれぞれにかなり効果があったと思い込んでおり(実際効果があったのかもしれませんが)、病院で積極的治療を受ける気持ちはないようです。
ステーションで話し合い、少しでも患者さんの苦痛を軽減し、ご家族のもとで最期まで過ごさせてあげられるよう支援したいと考えてはいますが、この皮膚潰瘍の状態に対してどんな処置を行えば良いのか教えて下さい。
現在の皮膚潰瘍の状態としては、乳房の膨らみの2倍以上の大きさのゴツゴツした岩山様潰瘍で厚みは5cm以上、横幅は約10cm、潰瘍の複数箇所から出血が常にあり、突然、吹き出すような出血を認めます。
(画像を添付できないので現状の説明が不十分で申し訳ありません)。
現在は、流温水で洗浄後10枚ガーゼで保護するだけです。
よろしくお願い致します。

大変な患者さんを介護しておられますね。治療を拒否し民間療法に走る方は時々おられます。最初から標準的な治療をしないと、この患者さんのようにどんどん悪くなる一方なので、最初に診断、治療した医師のところで何とかならないと、今回のようになってしまいます。その医師もがんばって説得されたのでしょうけど、それで治療を拒否されると悲しいですね。それでも、出血したら救急車を呼び輸血し精密検査をするというのは、どうも矛盾しているように思います・・・

まあ、それはさておき、現在、皮膚潰瘍にしてあげられることは、しっかり軟膏を塗り乾燥を防ぐことです。白色ワセリンでもよいのですが、悪臭がするのであればクロマイワセリンを使われると少し綺麗になると思います。いずれにしても、軟膏をたっぷり塗り乾燥を防いでガーゼと皮膚がくっつかないようにすることです。はがすときに出血しますので。乳房の大きさの2倍であればかなり軟膏の量を使いますので、白色ワセリンの方が断然安いです。あと、ガーゼはどんどん水分が乾燥して軟膏が減りますので、おむつパッドとか生理用のナプキン、パッドみたいなものを看護師さんはよく使っておられるようです。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行