センチネルリンパ節のうち1コに転移がありました。腋窩リンパ節を郭清するべきでしょうか?放射線治療で済ませるべきでしょうか?

2020年4月4日  , 

乳房全切除術前にリンパ節生検のみ行い、7個中1個の転移がありました。
乳がん診療ガイドラインの「CQ4センチネルリンパ節に転移を認める患者に対して腋窩リンパ節郭清省略は勧められるか」という項目で「CQ4b-3放射線療法ありなら腋窩リンパ節省略を弱く推奨する」とありますが、この放射線療法の照射部位というのは乳房切除後の胸壁や鎖骨下のことですか?それとも腋窩ですか?

乳癌治療ガイドラインのCQ4の解説にも記載されていますが、“腋窩リンパ節郭清が省略されたマクロ転移のある乳房切除症例に対する放射線治療” は “腋窩リンパ節郭清が省略されたマクロ転移のある乳房部分切除症例に対する放射線治療” と同様であるべきとの考えがガイドライン作成委員の中で合意が得られています。

“腋窩リンパ節郭清が省略されたマクロ転移のある乳房部分切除症例に対する放射線治療” に関しては、放射線治療のFQ2bの解説に記載されていますが、腋窩を含む領域リンパ節への放射線治療を考慮すべきと記載されています。しかし、至適な照射野の設定については不明であり、それぞれの患者さんの臨床所見をもとに個別に検討することが推奨されています。

領域リンパ節とは腋窩、鎖骨上、胸骨傍リンパ節のことです。

したがって、全ての患者さんに対して一律に領域リンパ節全範囲に放射線治療を行うのではなく、年齢、リンパ節転移の個数、領域リンパ節転移の部位、術後薬物治療の内容といった様々な臨床的因子を考慮しながら過不足のない放射線治療を検討しているのが現状ではないかと考えます。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治