術後9年で骨転移と対側腋窩リンパ節転移がみつかりました。フェソロデックス+ランマーク治療で大丈夫でしょうか?

2020年6月22日   

9年前に左胸に乳がんができ部分切除、左腋窩リンパ節転移あり、1年半前に局所再発で切除、どちらもホルモン治療で、今回まではエキセメスタンを飲んでいました。今回定期検診で腫瘍マーカーの数値が悪くPET CT検査をし、結果 骨に3箇所の転移と右腋窩のリンパ節に転移がありました。まだどれも小さいとの事でした。今後の治療は、ランマーク、フェソロデックスの注射で様子を見ていくそうです。1番最初の手術の脇とは反対の右脇リンパの転移も見つかったので、そちらの方は手術するのかを聞いたところ、手術はせず、先ほど書いた2種類の注射で様子を見るとのことでしたが、脇のリンパ転移(5ミリ程)をそのままにしていても大丈夫なのか不安です。

まだ、昨日告知されたばかりで、不安でネットで色々調べたのですが、ますます不安がつのります。この治療方法が一般的なのでしょうか?

手術後、5年以上経過してからの再発・再々発で、色々と不安になられると思います。まずは、再発の分類をしましょう。

再発は①局所再発、②遠隔再発、に大きく分けられます。なぜ分類するかというと、このふたつは、再発した経緯が違うので、治療法が大きく異なります。局所再発は、温存した乳房や、皮膚、手術した側の腋窩リンパ節、鎖骨上下リンパ節などの、もとあった乳がんの近くに再発したもので、多くはリンパ管(皮下のリンパ管も含めて)を伝って局所に再発したものや、乳腺内から新しくできたものも含まれます。全身には、がんが広まっていない可能性があるため、局所の治療(手術や放射線治療)をきちんとおこない、加えて必要であれば全身治療(薬物療法)をおこなえば、完全治癒も目指せます。

質問者の最初の再発は、①の局所再発なので、手術をおこない、全身治療(ホルモン療法)をおこなっています。一方、遠隔再発は、もとあった乳がんからは遠く離れたところに再発したもので、今わかっている再発したところ以外にも、画像検査ではわからない小さながん細胞(微小転移)が全身に潜んでいると考えられます。今わかっているがんだけを局所療法(手術や放射線治療)しても、その他の潜んでいるがんはやっつけられません。そのため、治療は全身治療(薬物療法)中心となります。質問者の2度目の再発は、骨と対側腋窩リンパ節ですので、どちらも遠隔再発になります。治療は全身療法として、ホルモン療法をまずおこなって、効果をみていくことになります。効果をみていくうえでも、リンパ節の大きさを手軽な超音波検査で判定できるのは、メリットとなります。リンパ節だけ切除しても、骨の転移と全身に潜んでいるがんは根絶できていません。

最初の手術(9年前)の時と、治療に対して同じ考えなのは、局所再発です。遠隔再発は、初回の乳がん発見時にステージ4だったらどうするか?と考えるとわかりやすいかも知れません。

2度の再発で、不安になられると思います。受けておられる治療法は、過去の治療も現在・の治療も一般的です。今後も治療が長く続きますが、主治医の先生と良く相談されて、納得して治療を継続してください。

再発治療については、「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」という本にわかりやすく書いてありますので、読んでみてください。

 

文責:香川乳腺クリニック 香川直樹