ER陽性HER2陽性乳がんの術前、術後化学療法について

2021年8月27日  , 

質問①術前化学療法について
ルミナルHER2陽性乳がんで術前化学療法としてAC4回後、パクリタキセル12回+ハーセプチン+パージェタを行いそ後手術しました。実は病院2つから治療方針を聞いており、以前病院ではドタキセル+ハーセプチン+パージェタ後にECを短縮で行う予定でした。今でもどちらが良かったか悩んでいます。病院では短縮をすると治療効果が上がると言われました。病院ではまず最初にACをするが大事だと言われました。しかし前病院ではタキサン系を先にします。治療効果に違いはあるでしょうか?
質問②術後化学療法について
これから術後化学治療を行う予定ですが、病理結果センチネルリンパ節へ転移がなくステージIIAということで、決まりによりパージェタが利用出来ないと言われハーセプチン使用と言われました。乳癌は比較的初期から血流で転移をおこすと聞いたことがあり、出来ればリンパ節転移に関わらず術後化学療法としてパージェタとハーセプチンどちらも併用したいですがそういうことは病院によっては医師判断で可能なでしょうか?

ご質問ありがとうございます。

術前化学療法について;HER2陽性乳がんでは、ドーズデンス化学療法(3週毎を2週毎のスケジュールに短縮する方法)と通常の3週毎のスケジュールと比較し再発リスクが低下した報告はありますが、有意差(意味のある差)は認めませんでした。また、アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤のどちらを先にしても治療効果に差はありません。ですから、質問者様の受けられた術前化学療法は最適な治療と考えます。

術後化学療法について;病理の結果、ステージⅡAということですが、術前化学療法後に乳房の腫瘍が残っていたがどうかで薬の選択が変わります。乳房腫瘍が消失していればハーセプチン単剤でも良いですが、腫瘍が残存していれば、カドサイラ(ハーセプチンに抗がん剤を結合した抗がん剤)を3週毎、計14回行うことが推奨されます。消失していた場合、ハーセプチンにパージェタを加えるかどうかはどちらでも良いとされており、おっしゃるように施設や担当医の判断で選択しています。化学療法前の腫瘍の大きさや腋窩リンパ節転移の状況によって判断されると思います。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子