HER2陽性乳がん、ステージ2Bです。術前抗がん剤の必要性と待ち時間についてお聞きしたいです

2021年7月27日   

初めて質問します。
先日、HER2陽性乳がん、ステージ2bと言われました。今週PETCT、来週心電図等の検査をし、再来週治療日程の発表です。
まだPETCTをやっていないのですが、初診で遠隔転移の可能性は極めて低いとの事ですが、そこは信じても良いのでしょうか?また、抗がん剤がよく効くタイプとの事で、術前抗がん剤をやる事になりました。
手術室が満杯で時間がかかると言う理由もあるようですが、術前の抗がん剤はあまり意味がないという記事を目にし、不安になりました。そうなんでしょうか?
また、しこり発見時からすでに3か月が経過しようとしています。
そんなに待っても大丈夫なのでしょうか。
主治医とはあまりコミュニケーションがとれていなく、心配になって質問いたしました。
以上3点、ご回答よろしくお願いします。

乳がんと診断され、今はわからないことだらけで不安になられていることとお察しします。3つほどご質問をいただきましたのでひとつづつお答えさせていただきます。
①転移の可能性が低いということは信じていいかどうかですが、まずは術前検査をしっかり受けることが大切と思います。検査前の遠隔転移の可能性が「極めて高い」場合でも「極めて低い」場合でも、術前検査後の結果は変わることはありません。受けた検査の結果で遠隔転移があれば「転移あり」、遠隔転移がなければ「転移なし」とはっきり決まります。したがって「転移の可能性が低い」と信じて術前検査を受けた方が気分は楽だと思います。主治医の先生のおっしゃったことを信じていいと思います。
②HER2陽性乳がん、ステージ2bとのことなので、 手術室が空いてかどうかに関係なく、 近年は、特にHER2陽性乳がんは術前の抗がん剤療法を勧めることが圧倒的に多いと思います。手術前に抗がん剤療法を行い、手術で切除したものを病理学的に評価して、がん細胞が残っている場合には手術後の抗がん剤療法の内容を変えた方が再発率が下がるということが報告されたからです。また、HER2乳がんは「抗がん剤がよく効くタイプ」であり乳がんが小さくなればその分温存手術時後の整様性向上(見た目のきれいさ)にもつながる場合があります。今回の場合、術前に抗がん剤治療をやる方が利点が多くかなり妥当な治療方法だと思います。
③乳がん細胞1個から1㎝大の大きさになるまで約8年かかるといわれています。3か月前にしこりに気づかれたようですが、3か月前に乳がんができたわけではなく、その何年も前からあったということが想像できると思います。乳がんと診断されれば少しでも早く治療を開始したいというお気持ちは皆さんお持ちだと思います。しかし必要な精密検査、必要な病状評価、必要な治療説明をなくして最善の治療は受けられませんから、ある程度の時間はかけてしっかり準備をすることが大切です。いま差し迫ったつらい症状がないのであれば1週間、2週間あわてる必要はありません。一般的には初診から1か月前後で治療(手術もしくは抗がん剤)が始まることが多いです。
さいごに・・・今回のご質問で一番気になったのは「主治医とはあまりコミュニケーションがとれていなく」というくだりでした。十分に話して自分が納得したうえで安心して受ける治療が、自分にとっての最良の治療であり、それには医療者との良いコミュニケーションは欠かせないと思います。チーム医療として乳がん診療を行っているところも多いので、頼ることができるのは主治医の先生だけではなく看護師さん、薬剤師さんなども相談に乗ってくれるかもしれません。ぜひコミュニケーションをしっかりとって自分にとって一番良い治療を受けられるよう願っております。
文責:島の病院おおたに乳腺外科 安井大介