術前化学療法でpCRとなったHER2陽性乳がんに対しての術後HER2治療について教えて下さい。パージェタは必要でしょうか?

2019年12月13日  , 

私は浸潤性乳管がんで、術前組織診はER30%、PgR 0%、HER2 3+でした。術前化学療法FEC3クール→ドセタキセル+ハーセプチン+パージェタ3クールを行った後、乳房部分切除術を受けました。術後病理はpCRでして、術前T1〜2M0N0→術後T0M0N0とのことでした。現在放射線治療中ですが、来週から分子標的薬点滴を再開する予定です。ここでいくつかご質問させてください。
❶これからの分子標的薬の使用についてですが、ハーセプチン単剤にするか、パージェタを併用すべきか、担当医の先生も少し迷いがあるようです。パージェタは再発転移予防するにはどの程度の上乗せ効果が期待できるのでしょうか。耐性を生じることがあると思いますが、今そこまで使用する必要がなければ、今後再発転移が起きた時のために使用せず取っておいた方がいいという考えは正しいでしょうか。
❷サブ分類はルミナルB(HER2陽性)ですが、ERだけ30%で、HER2陽性でないルミナルタイプや単純にHER2陽性だけのタイプとは予後がどの程度違いますか。

HER2陽性乳がんにパージェタを含む術前化学療法を受け、手術の病理検査でpCR(病理学的完全奏効)が確認され、これから術後薬物療法を予定している、という状況と理解します。

❶手術後の薬物療法をハーセプチン単剤にするか、ハーセプチン+パージェタ併用にするかは、意見が分かれるところです。パージェタを併用することの効果上乗せはあると思いますが、pCRになったとのことですので、実質上の上乗せ効果は少ないと予想されます。明確なデータはありませんが、数%以下でしょうか。パージェタの添付文書には「HER2陽性の早期乳癌の術後患者のうち、再発リスクの低い患者(リンパ節転移のない患者)における本剤の有効性及び安全性は確立していないことから、再発リスクが高い患者を対象とすること」と記載されていますので、それを踏まえて担当医とご相談ください。なお、現在は根治(完治)を目指せる状況ですので、再発したときを心配して治療を控えることは、通常はしません。再発防止のため、納得できる十分な治療を受けることをお勧めします。

❷乳がんの予後は、サブタイプ分類だけでなく、進行度(ステージ)も関わりますので、一概に回答はできません。HER2陽性でpCRになった場合の再発率は、ERに関わらず5年で10~20%程度で報告されているものが多いようです。ルミナルタイプでpCRになった場合は、もう少し再発率が少ないようです。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 笹田伸介