術前化学療法でpCRとなったHER2陽性乳がんに対しての術後HER2治療について教えて下さい。パージェタは必要でしょうか?
私は浸潤性乳管がんで、術前組織診はER30%、PgR
❶これからの分子標的薬の使用についてですが、ハーセプチン単剤
❷サブ分類はルミナルB(HER2陽性)ですが、ERだけ30%
HER2陽性乳がんにパージェタを含む術前化学療法を受け、手術の病理検査でpCR(病理学的完全奏効)が確認され、これから術後薬物療法を予定している、という状況と理解します。
❶手術後の薬物療法をハーセプチン単剤にするか、ハーセプチン+パージェタ併用にするかは、意見が分かれるところです。パージェタを併用することの効果上乗せはあると思いますが、pCRになったとのことですので、実質上の上乗せ効果は少ないと予想されます。明確なデータはありませんが、数%以下でしょうか。パージェタの添付文書には「HER2陽性の早期乳癌の術後患者のうち、再発リスクの低い患者(リンパ節転移のない患者)における本剤の有効性及び安全性は確立していないことから、再発リスクが高い患者を対象とすること」と記載されていますので、それを踏まえて担当医とご相談ください。なお、現在は根治(完治)を目指せる状況ですので、再発したときを心配して治療を控えることは、通常はしません。再発防止のため、納得できる十分な治療を受けることをお勧めします。
❷乳がんの予後は、サブタイプ分類だけでなく、進行度(ステージ)も関わりますので、一概に回答はできません。HER2陽性でpCRになった場合の再発率は、ERに関わらず5年で10~20%程度で報告されているものが多いようです。ルミナルタイプでpCRになった場合は、もう少し再発率が少ないようです。
文責:広島大学病院乳腺外科 笹田伸介