同様の質問があることは承知しておりますが、ホルモン療法を中断しての妊活について相談させてください。3年前に乳がんの診断を受けました。
[針生検の結果]
・浸潤がん(4.1×3.8㎝)
・ER( +:50%)
・PgR(+:80%)
・HER2(+)(score3+)
・Ki67(+)(+:20%)
・ルミナルB 陽性
[治療]
・抗がん剤治療(タキソテール+ハーセプチン+パージェタ、AC療法)
・全摘手術
[術後の病理結果]
・1.2×1.1cm
・リンパ節への転移なし。
・ER(+:100%)
・PGR(+:50%、30~80%)
・HER2(-)(score0)
・ki67(+)(+:10%)
・ルミナルB 陰性
[術後の治療]
・ハーセプチン+パージェタ
・ホルモン療法(5~10年予定)
・リュープリン(5年予定)
術後、残りのハーセプチン+パージェタ終了後、妊娠を希望していたため医師へ相談しましたが「ホルモン療法を休薬するなんてリスクが高すぎる。うちの病院ではできない」とのことで、東京の病院でセカンドオピニオンを受けましたが、私のがんの特性や悪性度などから見てやはりリスクが高すぎるため勧められないとの話でした。また、私の乳がんの情報を入力した上での5、10、15年後の生存率を算出してくださり、手術・抗がん剤・ホルモン療法をやったとしても15年後の生存率は69%でした。
やはり私の状態ではホルモン療法を中断して妊活をすることはできないのでしょうか。(卵子凍結はしていません)
36歳という年齢や抗がん剤治療による卵巣機能のダメージもあるので、必ずしも妊娠できるわけではないことや、祖母が同じ若年性乳がんで亡くなっているので、まだ遺伝子検査は受けていませんがもし遺伝性だった場合、再発や卵巣がん等の心配もありますが諦められない気持ちも強いです。(もちろん妊活も半年もしくは1年と期間限定でと思っています)
また、妊娠出産によるリスク増大のエビデンスはないとありますが、妊娠できなければ休薬した分だけリスクは高くなるのでしょうか。
とりとめのない相談で申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
化学療法も、抗HER2療法も、ホルモン療法もと、全ての種類のお薬治療を必要とするのLuminal-HER2 type乳がんですが、必要な治療をちゃんと受けられておりますし、大変に治療を頑張っておられると思います。
POSITIVE試験というホルモン感受性あり、HER2陰性乳がんの方のホルモン療法を中断して妊活を行う国際試験が現在登録が終わり経過を観察しているところです。この結果が少なくとも5年以上は経ってから明らかになってくると思います。ただ、この試験にはご自身の陽はHER2も陽性の方は含まれませんので、ご自身の状況にそのまま当てはめることはできません。この試験に関する結果がでて、術後何か月以上ホルモン療法をすればその後、生殖医療の介入で不妊治療をしても予後(乳がんが再発してなくなる確率)に差がないのか?ということに対する指標ができますが、「それに準じて中断すれば100%大丈夫」というお答えには恐らくならないかと思います。(以前のご質問に関する回答をご参照ください。Q.ホルモン療法をこれから始めますが不妊治療もしたいです
化学療法や抗HER2療法をしっかりなされますのでこれでがん細胞は全部やっつけることができたのでは?と考えたいのですが、ご自身の乳房にできていた腫瘍は通常は全てのがん細胞が同じ性格ではないと考えられます。
つまり、HER2蛋白とホルモン感受性のどちらも陽性のがん細胞もいれば、どちらかしか出ていないがん細胞や、どちらも出ていないがん細胞も混ざっていることが多いのです。ただ、がん細胞を最もたくさん観察できる組織標本で調べたところ、HER2の陽性基準もエストロゲンレセプターの陽性基準も満たす腫瘍だったという結果をうけて治療法が選択されています。どちらの治療も効果が期待できるのでどちらも受けられることが最も予後は良くなると考えられます。
やはり、ホルモン療法を全く受けずに妊娠を希望される選択は、どのくらいの再発に影響するかお答えできるエビデンスはありませんが、少なくとも「再発はしない」ということを申し上げることができません。
大変にお辛い決断ですが、どうすることが最も後悔しないと思われるのか、ご自身やご家族のお気持ちをよく話し合われてお考えいただければ幸いです。
文責:広島大学病院乳腺外科 恵美純子