ルミナルAリンパ節微小転移あり 腋窩リンパ節郭清済みの術後の治療について
2021年7月15日 術後治療方針
乳がんで先月末にがんの部分切除リンパ節に転移があっ
術後の病理検査で腫瘍の大きさは14mm×10mm
浸潤性乳管がん 硬性型 切除断端陰性
各異型スコア1点 核分裂像スコア 1点 核グレード 1:1+1=2
腺管形成スコア2 核多形性スコア1 核分裂像スコア1
組織学的分類 グレードI(2+1+1=4)
Ki67 15.0% her2スコア2←Fish 検査によりシグナル比1.1増幅なしのため陰性
E-R ts8
Pg-r ts5 でホルモン陽性
リンパ節 センチネルリンパ節7個のうち1つに1mm大の腫瘍
追加で取ったレベル1のリンパ節12個には腫瘍なし
との診断でした。乳がんの場所は右脇のすぐ近くのためリンパ節郭
主治医は病理検査の結果の数値ではルミナルAだが、ルミナルAの
私としては上乗せ効果が期待できないなら抗がん剤はやりたくない
ご質問ありがとうございます。ルミナルAタイプの乳がんで、浸潤径14mm、リンパ節転移は微小転移1mm 1個だけで、腋窩リンパ節は郭清済み。今後、放射線治療とホルモン療法を行う予定とのことですね。
まず一つ目、『抗がん剤はやりたくないが転移や再発は怖い』とのことですが、確かにデータからはルミナールAタイプで化学療法不要のように見えますが、その決定を安心して行いたいのなら、Oncotype DXという遺伝子検査を主治医と相談されてはいかがでしょうか。ルミナールタイプの早期乳がん患者さんで、再発スコアの結果から安心して化学療法を省略してホルモン療法のみの治療でよいのかどうかがわかります。質問者様の場合、N1mic(微小転移)ですので、『再発スコア結果0~17のリンパ節転移陽性(N1mic、N1)患者さんは、化学療法を受けなくとも予後良好』という結果がありますので、再発リスクがその範囲であれば、安心して化学療法を省略できます。
二つ目、『ホルモン治療は一種類のお薬だけでいいのか、他に併用して再発予防に期待できるお薬はないのか』ですが、現時点では、乳癌診療ガイドライン(https://jbcs.xsrv.jp/guidline/2018/)では、閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法として、ホルモン療法単剤が推奨されています。閉経後であれば、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール(フェマーラ)、アナストロゾール(アリミデックス)、エキセメスタン(アロマシン))、あるいはタモキシフェン、トレミフェン単剤の投与となります。再発乳がんの治療で使用されるCDK4/6阻害剤等は現時点では術後ホルモン療法では併用できません。
文責:JA尾道総合病院 乳腺外科 吉山 知幸